質問の矛先に気をつけるだけで
「人格攻撃」を避けられる

 コミュニケーションにおいて、相手の逆鱗に触れることがあります。

 それは「相手の○を潰すこと」です。○には何が入るでしょうか?

 ○には、「○を潰された」「○に泥を塗られた」「○を汚された」こんな言葉が入ります。そう、顔です。

「面子」という言葉も同じ意味で使われます。「面子にかかわる」「面子が保たれた」「面子が丸潰れだ」など、人はとにかく面子にこだわります。

 時代劇を見ていると、面子を潰された武士が相手を斬り殺すシーンがありますが、武士にとって面子はそれほど大切なことなのです。

 人は、「恥をかかされた」「バカにされた」「下に見られた」ときに、信じられないくらい凶暴になります。現代において、手が出ることはほぼないと思いますが、相手の面子を潰すというのはそれほど恐ろしいことなのです。

 この話をすると、「私は、相手の顔を潰すようなことはしません」という人が大半です。

 でも、本当にそうでしょうか。

「なんでそんなことにも気づかないの?」
「その案、本当によく考えた?」

 相手は一生懸命やっているのに、ちょっとしたひとことで顔を潰してしまうことがよくあります。

 相手の面子は丸潰れ、プライドはズタズタに。

 なぜなら「自分を否定された」と感じるからです。

 では、相手の顔を潰さない質問とはどんなものでしょう?

 微妙な違いですが、こう変えてみてください。

「どうしてそんなに時間がかかるの?」
 ↓
「結構時間がかかっているみたいだけど、困ってることない?」

「なんでそんなことにも気づかないの?」
 ↓
「何かわかりにくい点があったんじゃないの?」

「その案、本当によく考えた?」
 ↓
「よく考える時間がなかったのでは?」

 後者の質問は、相手自身について言及しているのではありません。

書影『質問の一流、二流、三流』(明日香出版社)『質問の一流、二流、三流』(明日香出版社)
桐生 稔 著

 相手が「困っていること」「わかりにくい点」「考える時間」、つまり相手が抱えている問題や環境に矛先を向けています。そうすれば相手の面子を潰さずに済みます。

 相手を真っ向から否定するのではなく、他のことに目を向けて何か考えるきっかけを与えることです。

 相手の顔を潰してしまうとき、ほとんどのケースが「そんなつもりはなかった」です。気づかずに相手の人格を攻撃しています。

 そんなときこそ、質問の矛先を「相手」から「相手が抱える問題や環境」など、人格以外に向けてみてください。

 あなたの質問が相手との融和を生み出し、より強固な関係性を築くはずです。