「その他の空き家」とは、簡単にいうと住む人のあてがない空き家のことです。住む人がいなくなったり、なかには所有者が不明になったりして、管理が行き届きにくい空き家といってもよいでしょう。そのまま放置しておくと、防災、防犯、衛生などの面で大きな懸念が生じる恐れがあります。

 そうした「その他の空き家」は、1998年に182万戸だったものが2018年には349万戸と、空き家全体の増加率を上回り、1.92倍に増えています。ほぼ倍増といっても過言ではありません。すでにその数は、住宅総数の5.6%に達しています。空き家の数は増える一方と考えられ、2025年には420万戸、2030年には470万戸が「その他空き家」になるという予測もあります(令和4年国土交通省住宅局「空き家政策の現状と課題及び検討の方向性」より)。これは由々しき事態といってよいでしょう。

「実家の相続」を巡る法改正

 荒廃した空き家が増えることは、行政にとって防災、防犯の点で大きな懸念材料です。こうした事態を受けて、空き家の発生を防ぐために、「実家の相続」に関してさまざまな法律や制度の改正が進んでいます。国税庁、総務省、国土交通省などを中心にして、国が空き家発生を防止する方向へ動いているのです。

 今回は法改正のうち、(1)相続登記の義務化、(2)「空き家譲渡特例」の適用期限の延長について見てきましょう。

2024年4月から始まる相続登記の義務化とは

「実家の相続」にかかわる大きな変更は、「相続登記の義務化」です。これは、民法と不動産登記法などの法律改正によって、2024年4月1日から施行されます。

 相続登記改正により、2つの義務が課されることになります。

 1つ目は、相続開始および不動産の取得を知った日から3年以内に登記を行う義務です。