皇位継承についての
これまでの有識者会議

 皇位継承についての有識者会議というと、小泉内閣時の2005年、女系天皇を容認する報告を出した「皇室典範に関する有識者会議」(座長・吉川弘之元東京大学総長)が有名だが、2006年の悠仁さまの誕生で前提を失い、宙に浮いた。

 その後、外野からの愛子天皇待望論などはあったが、現行の皇室典範の規定で秋篠宮皇嗣殿下が第1位、その子の悠仁さまが第2位の継承順位となっているのをいわば廃嫡することは、国際的にもほとんど類例がないし、政治的にも実務的にも支持する者は少ない。

 ただ、悠仁さまの後が続かなかったらという含みで、女性皇族が結婚したのち女性宮家を創設する案が、野田首相時代に持ち出された。

 しかし、安倍内閣になり、陛下が退位を希望されたため、それへの対応が優先された。そして、陛下の退位を特例として処理し、秋篠宮殿下を皇嗣殿下として皇太子と同じ扱いとして将来の皇位継承を確定させるとともに、女性宮家等(等は旧宮家の扱いを念頭)の検討をすると付帯決議された。

 そして、菅義偉内閣のときに、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議(座長・清家篤前慶応義塾塾長)が設立され、岸田内閣の2021年12月に報告書を出した。

 この有識者会議は、小泉内閣時代の有識者会議と同じ位置づけで、国会の「附帯決議」を受けて設立されたものなので、小泉内閣時代の報告書は上書きされ、いわば無効になった。つまり、二つの案が併存しているのではない。

 また、女性皇族の配偶者を皇族扱いする案は、眞子さんと小室圭氏の結婚をめぐる騒動で、不適切な皇族の出現の危険性が杞憂(きゆう)でないことがはからずも示されたため、やや後退した。

 2021年12月の報告書では、(1)国家の基本に関わる事柄なので、制度的な安定性が重要、(2)次世代の皇位継承者として悠仁さまがいる中で仕組みに大きな変更を加えることには慎重であるべきだ、(3)有識者のほとんどが、悠仁さまが将来の天皇になることは変更すべきではないという意見、(4)皇族方のこれまでの人生設計を安直に変えるのは良くない――とした。

 そして、悠仁さま以降の皇位継承は、悠仁さまが結婚され、お子さまがどうなるかのめどがついてから議論を深めるべきで、つまり今後20年ほど凍結すべきだとした。

 秋篠宮皇嗣殿下が、上皇陛下が退位されたのと同じ年齢(85歳余)になられるのは2050年、悠仁さまが同じ年齢になられるのは2092年なので、悠仁さまに男子のお子様がおられなかったとしても、2070年頃までに決めたらいいことである。そのときの悠仁さまの皇位継承者は、現在はまだ生まれていない子であるから、現時点での人気投票的議論は全く無意味である。