犬は人間に犬種ごとに役割を担わされている家畜動物であり、持って生まれた役割を全うするには「純粋犬」であることが必須であるという。「雑種犬」も盲導犬や麻薬探知犬として活躍しているが、中には人間の興味本位で誕生させられる雑種犬もおり、問題視されている。本稿は、林 良博『日本から犬がいなくなる日』(時事通信社)の一部を抜粋・編集したものです。
人間によって担わされた
「純粋犬」の役割
純粋犬と雑種犬に厳密な学術上の定義はありませんが、日本では、ジャパンケネルクラブが純粋犬について説明しています。それによると純粋犬種とは、その犬自身と、両親から祖先までがすべて同一の犬種であることが血統証明書により証明された犬を指すとしています。端的には、同一の犬種のみで交配されてきた犬が純粋犬であり、それ以外の犬が雑種犬だといえます。世界的には、純粋犬の犬種は少なくとも約200種、多く数えると約300種があります。
血統証明書は血統書ともいいます。よく、「この犬は血統書付きだ」といった表現がなされます。「価値のあるもの」といった意味合いで捉えることが多いのではないでしょうか。実際、その犬が血統証明書で純粋犬であると認められるには、飼い主がジャパンケネルクラブに入会金2000円と会費1年分4000円を払って会員となり、一胎子、つまり同一の犬から同時に生まれた仔犬たちのうち1頭につき生後90日以内で2600円、生後91日以上経過後では6000円の登録料がかかります。純粋犬は、これほど価値づけられていると見ることができます。
200種ないし300種にわたる多様な犬種があるのは、ひとえに人間の手によるものであり、その背景にはそれぞれの犬種が役割を担わされているということがあります。犬は犬種ごとに役割を担わされている家畜動物である以上、純粋犬の存在にも意味があるということになります。国際畜犬連盟やジャパンケネルクラブなどの畜犬団体は、犬種グループを、次の10グループに大きく分けています。
つまり、家畜の群れを誘導・保護する「牧羊犬・牧畜犬」、番、警護、作業をする「使役犬」、穴のなかに住むキツネなどの小型獣用の猟犬としての「テリア」、地面の穴に住むアナグマやウサギ用の猟犬としての「ダックスフンド」、日本犬を含むスピッツ(尖った)系の犬を指す「原始的な犬・スピッツ」、大きな吠え声と優れた嗅覚で獲物を追う獣猟犬としての「嗅覚ハウンド」、猟において獲物を探し出してその位置を静かに示す「ポインター・セター」、ポインター・セター以外の鳥猟犬である「7グループ以外の鳥猟犬」、家庭犬、伴侶や愛玩目的の犬を指す「愛玩犬」、そして、優れた視力と走力で獲物を追跡捕獲する「視覚ハウンド」です。