タピオカドリンクを持つ女性写真はイメージです Photo:PIXTA

コロナ禍前の2018年ごろから大ブームを巻き起こしたタピオカ。「タピる」という言葉が新語・流行語大賞トップテン入りするほど絶大な人気を誇りましたが、あれほどあったタピオカ屋も今ではチェーン店をいくつか見かける程度です。爆発的なブームを起こしていつの間にか消える流行り物の背景には、あるカラクリがあります。※本稿は、菅原由一『タピオカ屋はどこへいったのか? 商売の始め方と儲け方がわかるビジネスのカラクリ』(KADOKAWA)の一部を抜粋・編集したものです。

タピオカはなぜ3回もブームを起こしたのか?

 社会の変化を捉え、ブームに飛び乗ること。これは儲けるための定番の方法です。タピオカ屋の急増と成功は、その典型といえるでしょう。

 タピオカ屋が流行り始めたのは2018年ごろで、19年には新語・流行語大賞のトップ10に「タピる」がランクインしました。

 実は、このブームは3回目です。1回目は1992年で、80年代から流行っていたアジア料理のデザートとして出された白いタピオカが入ったココナッツミルクが流行しました。2回目は2008年。台湾の飲食チェーン店が日本に増えて、タピオカミルクティが流行しました。このときにはタピオカは白から黒になり、スプーンで食べるものからストローで飲むものに変わっています。直近のブームの原型はこのときにできたものです。

 そして、2018年が3回目です。きっかけは、LCC(格安航空会社)の就航によって海外へのアクセスが安価になり、近場である台湾旅行の人気に火がついたことで本場のタピオカミルクティの人気が再燃したのです。

モノからコトへの変化

 直近のブームが前回までと異なるのは、インスタグラムが重要なキーワードとなったことです。

 新語・流行語大賞を見ると「タピる」がランクインした前々年の2017年に「インスタ映え」が年間大賞に選ばれています。若いSNSユーザーたちはインスタ映えするネタを探していました。その下地がある状況で、タピオカミルクティが「映えフード」としてマッチして、のどを潤すために買われていたタピオカミルクティが、写真に撮って投稿する若者のアイテムとして買われるようになったわけです。

 飲料としてではなく撮影の小物としてタピオカミルクティが、流行った現象は「コト消費」の表れといえます。コト消費は、体験の価値を重視して商品を購入する消費行動のことです。