消費者は自分の判断を正当化したい

 銀座にあるようなカウンターのみの寿司店は、高額ですが予約でいっぱいです。その並びにある高級クラブもお客さんが入っていますし、お客さんたちが着ている服や時計なども高額ですが、しっかり売れています。

 値段を高くすることによって満足度が高まる理由は利用者の心理と関係しています。人は基本的に自分の判断を正当化したいと考える心理が関係しています。高い店で食事をした場合、「高いのだから良い店であるはず」と思い込みやすくなります。

 また、自分の判断を正当化するための行動として、「美味しかった」「素晴らしかった」と評価している口コミ情報を重視し、低評価の口コミは無視したり、「この人は味オンチなのだろう」などと判断したりします。その結果「あの店は最高だった」と自分を肯定し、店の評価と満足感が高くなるのです。

 これは心理学で確証バイアスと呼ばれます。確証バイアスは、自分の思い込みを裏付ける情報を無意識に集めることで、合理的な判断がしづらくなることを指しています。

手間がかかるほどありがたみが増す?

 満足度が高まる要因として、予約が取りづらいこともポイントです。人が何かにお金を払うときには、金額だけでなく、その商品を手に入れるためにかかった手間や労力などもコストとして考える傾向があります。

 商品やサービスの質が同じでも、簡単に買えたときよりも苦労して手に入れたときのほうが価値があると感じるため、予約が取りづらい店を予約できたり、食事できたりしたときの満足度が高まりやすくなるのです。

 確証バイアスはSNSでもよく起きます。SNSでは、自分の関心ごとや考えに合う人とのコミュニケーションが増えます。すると、自分の考えが正しいという思い込みが強くなります。これはエコーチェンバーと呼ばれる現象です。SNSのような身近なところでも自分を正当化する思い込みは強化されているのです。