「水原氏はこれまでの公式履歴に『カリフォルニア大リバーサイド校卒』と記されていたが、実際には在籍が確認できず、通訳としての経歴にも一部実際とは違うことが記されていることも発覚していた」「彼がロサンゼルスの高校を卒業してからの約10年間は、ほとんどが分かっていない」としました。そして、水原氏が少年時代を過ごしたカリフォルニア州の地元を取材して、彼は高校卒業後に寿司店や日本酒輸入販売の日系企業で働いていた経歴があることを友人たちの話から明らかにした上で、裁判所の記録には2004年と09年にスピード違反で捕まったことがあることなども分かったとのことです。
記事によると、同氏の知人は「仕事熱心な人。こんなことになるとは思っていなかった」と話したといいますが、残念ながら同紙の取材でも、「開幕シリーズ後に米国に戻る飛行機にも乗らなかった」ということしかわからなかったということです。
確かに、日本のメディアが米国で取材するのは大変でしょう。「英語ができない」「土地勘がない」など色々な言い訳があるかもしれませんが、今はポケトークのような簡単な翻訳機もあります。テレビクルーなら、もっと上質な翻訳機能を持ったPCを米国に持ち込んでいるでしょう。
英語のできない記者が2人で渡米し
事件の真相を3日で突き止めた話
私は30年以上前、シリコンバレーでの日本企業の産業スパイ事件を英語のできない2人の記者で出張取材し、3日で真相を確かめたことがあります。質問事項を英作文でつくり、録音テープに相手の回答を録って徹夜で聞き取り、翌日わからないことがあったらまた米国人の自宅を訪ねます。日本流の夜討ち朝駆けをしたものですから、「オマエたち銃で殺されても知らないよ」と忠告を受けたほどです。
しかも、まだファックスもろくにない時代です。国際電話もバカ高く、とにかく与えられた使命を達成すべく必死で歩き回りました。現地では3日しか取材ができず、帰路の飛行機で原稿を書いて、次週の締め切りになんとか間に合わせました。威張れるような記事ではなかったですが、ジャーナリストの仕事とは、これが基本ではないかと思います。
米国から帰る飛行機の中で原稿を書いて、会社について提出したら、「オオッ、これで木俣が1人空いたから、明日までにもう1本書いて!」。これは「不適切にもほどがある」実例でした。根性取材をすべきというつもりはありませんが、あれだけの人数が記者会見に行き、新聞、テレビともに米国に支局もあるのだから、水原元通訳とその関係者を取材して、彼の単独インタビューを狙おうとするのが普通でしょう。それがプロの仕事というものではないでしょうか。