一時下火になっていた消費税率引き上げの議論が、ここへ来て再び熱を帯びてきた。10月17日の政府の経済財政諮問会議で、当初想定されていた経済成長率3.0%を、より現実的な2.2%に下げると、2011年度に国と地方を含めた基礎的財政収支(国債の発行や元利支払いなどの部分を除いた基本的な財政収支=プライマリーバランス)黒字化の目標を達成するためには、消費税率を最大2.5%引き上げることが必要との試算が了承された。
これは、単に一つの試算が了承されたことを意味しない。今回、初めて経済財政諮問会議が、将来の増税必要額を明示したことに意義がある。同会議の担当である大田弘子経済財政担当相は、会議後、あくまでも経済成長を強化することによって、プライマリーバランスの黒字化を目指す方針を強調した。
しかし、今回の承認が、今後の消費税率引き上げ議論のスタートラインになると見て間違いないだろう。過去の例を見るまでもなく、消費税率に関する議論は実体経済に大きな影響を与える要因で、今後の景気の行方を左右することも考えられる。今後の議論の進展には注目することが必要だ。
消費税引き上げの必要性
消費税引き上げ議論の背景には、わが国の巨額の財政赤字がある。わが国の財政は、先進国中最悪といわれるほど多額の借金を抱えている。財政当局でなくても、何とかして、早期に財政を立て直す必要があることに異論はいないだろう。
問題は、如何にして財政を立て直すかだ。財政建て直しを目指すためには、支出を減らすか、収入=税収を増やすかしか方法はない。ただ、支出を減らすと言っても、少子高齢化が加速するわが国では、社会保障費の増加は避けられず、削減の余地には厳然とした限界がある。