「ハリポタ」・「千と千尋」・「アナ雪」の
違いはどこにあるのか

「AとBのC」がどちらの構造に解釈されやすいかは、次のようなテストによって確かめることができます。まず、AとBを入れ替えてもほとんど意味が変わらず、Aと「BのC」を入れ替えると意味が変わってしまう場合は、[[AとB]のC]という構造をしていると考えられます。他方、Aと「BのC」を入れ替えてもほとんど意味が変わらず、AとBを入れ替えると意味が変わる場合は、[Aと[BのC]]である可能性が高くなります。このことを踏まえて、次の例題を考えてみてください。

 例題:有名な映画のタイトルには、「AとBのC」という形をしたものがいくつかあります。次の〈1〉~〈3〉の「AとBのC」型のタイトルのうち、他の二つと構造が違うものはどれでしょう。

〈1〉ハリー・ポッターと賢者の石
〈2〉千と千尋の神隠し
〈3〉アナと雪の女王

 まず〈1〉は、「ハリー・ポッター」と「賢者」を入れ替えると「賢者とハリー・ポッターの石」というふうに、意味が変わってしまいます。他方、「ハリー・ポッター」と「賢者の石」を入れ替えても、「賢者の石とハリー・ポッター」というふうになり、意味そのものは変わりません(もちろん、映画のタイトルとしてはイマイチですが)。よって、[ハリー・ポッターと[賢者の石]]という構造をしていると考えられます。

〈2〉はどうでしょうか。まず「千」と「千尋」を入れ替えると「千尋と千の神隠し」になりますが、意味そのものは変わりません。これに対し、「千」と「千尋の神隠し」を入れ替えると「千尋の神隠しと千」となり、意味が変わってしまいます。したがって、[[千と千尋]の神隠し]という構造をしていると考えられます。

〈3〉は、「アナ」と「雪」を入れ替えて「雪とアナの女王」にすると意味が変わりますが、「アナ」と「雪の女王」を入れ替えて「雪の女王とアナ」にしても、意味そのものは変わりません。これは〈1〉と同じパターンで、[アナと[雪の女王]]という構造をしています。つまり、他の二つと違うのは〈2〉です。