「ハリー・ポッターと賢者の石」タイプの作品タイトルとしては、他にも「竜とそばかすの姫」「モアナと伝説の海」などがあり、「千と千尋の神隠し」タイプには「風と木の詩」「冷静と情熱のあいだ」などがあります。皆さんも今後、こういう形の映画やアニメのタイトルを見かけたら、どちらのタイプか考えてみてください。

「山田さんと田中さんと佐藤さんが仲違いをした」
→モメたのは誰?

「AとBとC」のように、三つの名詞句が並べられるケースもしばしば曖昧になります。この場合、A、B、Cがすべてフラットに並べられているのか(構造1)、「AとB」がかたまりをなしているのか(構造2)、「BとC」がかたまりをなしているのか(構造3)という、三つの可能性が出てきます。

構造1:[A]と[B]と[C]
構造2:[A]と[BとC]
構造3:[AとB]と[C]

 たとえば昔の焼酎のCMソング『俺とおまえと大五郎』や、平松愛理の『部屋とYシャツと私』などといった曲のタイトルは、構造1と考えて問題ないでしょう。しかし、「山田さんと田中さんと佐藤さんが仲違いをした」という文の場合、三者とも他の二人と仲違いしたのか、「山田さんと田中さん」と「佐藤さん」が仲違いしたのか、はたまた「山田さん」と「田中さんと佐藤さん」が仲違いしたのか分かりません。「AとBとCとD」のように「と」によってつなげられる要素が増えると、解釈の仕方もさらに増えます。

 こういった曖昧さを解消する方法はいくつかあります。まず、「仲違いをした」という表現は、「AとBが仲違いをした」という形だけでなく「AがBと仲違いをした」という形でも使えます。この言い換えを利用して、「山田さんが田中さんと佐藤さんと仲違いをした」のように言えば、誰と誰が仲違いしたのかがはっきりします。

「と」だけでつなぐのは
コミュニケーション事故のもと

 また、「と」だけでなく、読点「、」や「そして」、「また」「および」「ならびに」などといった表現をうまく使うことで、曖昧さが減らせることもあります。