町内会に参加、大学と協力…
地域への参加が利益へつながる
「お客さんがどうしてカレーを残したのか、聞いてみることもしないし、考えない人も多いんですよね」
言われてみれば僕の事務所の近所にあるカレー屋は繁盛しているが、ときどきこんなことを熱心に聞いてくる。
「今日の日替わり、どうだった?かぼちゃとチキン。あんまり出なくて」
おいしかったけど、かぼちゃと鶏肉をカレーに合わせるのは日本だとあまり見ないように思うからお客さんがイメージしづらいのかも、なんて伝えると、ふむふむと頷きなにやら奥さんと話し込む。きっとメニューを改善するのだろう。
こうして日本人の意見を聞いて工夫をするカレー屋のほうが、実のところ少ないのだという。そこにはネパールが抱える教育格差の問題があるとも話す。せっかく開業したけれど1、2年で閉めるようなケースも見てきただけに、クマルさんの意見はなかなか手厳しい。それに日本のSNSやグルメサイトを活用したマーケティングをしない店もあるそうだが、そこから感じるのはやはり日本社会に溶け込んでいないということだ。
「つまり逆に言えば、うまくいっている店は地域の日本人としっかりつながっているんです」
たとえば、基本的なことだが近所の人にあいさつをする。町内会や商店街に加入して、なにか催しとか定期的な掃除などがあれば参加する。
「子供がいるなら学校と積極的に関わるべきです。登下校の時間に子供の見守り活動をするネパール人の親もいます。“お父さんお母さんの仕事を見てみよう”とか、小学校のそういう授業に協力して、子供たちを見学に招いているカレー屋もあるんです」
そういう店は、「あ、何丁目のあのカレー屋さんね」と覚えてもらえるし、来てもらえる。言葉がわからないうちはボディランゲージでもいい、近所づきあいをしようという姿勢を見せることがなにより大事だとクマルさんはよくアドバイスしているのだという。
「近くに大学があれば、なにか多文化関連や国際関係などのサークルとつながったり、学生のアルバイトを雇ったり。とにかく、その地域にどんなコミュニティがあるのか調べて、そこが日本人だけでも勇気を出して飛び込んでいくことです」
そういえば僕が住んでいる新大久保にも、商店街に参加している「インネパ」がある。祭りがあれば出店を出すなど街の活動に協力的だが、あの店は確かに人気だ。外国人というよりも、新参の商売人としてしっかり根づくために努力することが、結局は成功への近道ということなのだろう。