誰しも一度は遊んだことがあるクレーンゲーム。しかし、獲れそうで獲れないというもどかしい思いをした人も多いだろう。景品(プライズ)の形状も配置もさまざまなクレーンゲームも、重心や力点に着目すれば攻略の糸口が見つかるかもしれない。クレーンゲーム歴30年の物理学者が徹底解説する。※本稿は、小山佳一『クレーンゲームで学ぶ物理学』(インターナショナル新書)の一部を抜粋・編集したものです。
プラスチックリングが結ばれている景品
落とし口に落とすにはどうする?
2006年から2009年頃、私は宮城県仙台市内の複数のゲーセンで、クレーンゲームをプレイしていました。これから紹介するのはその頃の私の研究ノートをもとにした、プライズの置き方と転倒に関わる、プライズの重心と支点、力点についての考察です。
ある日、あるゲーセンでのこと。クレーンゲームのプライズとして、人気のキャラクターの顔をしたチョコレートが4個1セットで透明な袋に入って置かれていました。袋の口には、プラスチックリング(図表34内写真)がひもで結ばれています。
このプライズはフィールド上にありましたが、袋の口の部分がパーティション(間仕切りの板です)の上に載っており、プラスチックリングは落とし口側に出ていました。図表34上図はその様子を真上から見たもので、同下図は真横から見たものになります。この図でパーティションとプライズの接している点をOとしたとき、この状態のプライズの重心Gは右側のフィールド上にあり、安定しているといえます。
ここからどのようにして、プライズを落とし口に移動させましょう?
今回はUFOメカが下降する動きを利用して、落とし口に落とす方法でやってみます。
ポイントはUFOメカの下降時に、開いている右アーム先端のシャベルをプラスチックリングに入れることです。うまく入れば、そのままUFOメカは下向きに最下点位置まで降りていきプラスチックリングに下向きの力Fが作用し、プライズは引きずられるようにして落とし口に落ちていきます。
一度でうまくいかない場合でも、少しずつでも、プライズの重心GをOよりも左側(落とし口側)にすることができれば、プライズは自然と落とし口側に転倒しますから、プライズゲットとなります。
2024年の今でも、図表34のような配置のプライズを見かけますが、UFOメカにひもがついていたりゲーム機の設定でUFOメカが下降する下限が決められていたりすることが多いです(例外はあります)。
そのため、この手のタイプのプライズに対して現在では、アームの閉じる力とUFOメカが上昇する際の引っ張り上げる力で、プライズを落とし口側に移動させる方法が主流のようです。個人的な感覚でも、2006年頃に比べて今は、1回のUFOメカの操作でプライズを落とし口側に移動できる距離が短くなり、GをOより左側にすることが難しくなったように感じています。