地方財政の窮状を救うことは喫緊の課題だ。不動産不況の回復には表裏一体の関係にある地方財政の改革を避けて通れない。また、インフラ投資で景気支援を行いたくても、執行主体である地方政府の財政状況が制約となっている。
状況を打開すべく、財政政策の責任と負担を地方から中央にシフトする動きが始まった。中央政府はGDP比4~5%程度の財政黒字を続けており、債務のGDP比も24%と余裕がある。
注目すべきは中央政府が超長期特別国債の発行を約束したことだ。過去には、98年(銀行危機)、07年(ソブリンファンド設立)、20年(コロナ禍)の3回しか発行実績はない。今回の発行額や満期など詳細は不明だが、その用途はテクノロジー、地域統合、食料・エネルギー自給、人口政策といった中長期の戦略案件となるようだ。
目先の景気や不動産市場への対策が主眼ではないとしても、この資金を用いて中央政府が財政負担を徐々に肩代わりしていけば、地方政府が不動産市場の調整や景気対策を有効に行えるようになる。
より重要なのは、中央政府が地方への財政移転を通じて規律を利かせられることだ。これまでは中央政府が経済政策の方向性だけを示し、その意をくんだ地方政府が過度の競争に走る結果、不動産バブルを含めたさまざまな過剰投資を招いてきた。これを繰り返す余裕は現在の中国には残っていない。
(オックスフォード・エコノミクス 在日代表 長井滋人)