6月には再び大規模な値上げが…
実は、6月に再び値上げを予定する企業も多く、その分野は対企業向けの資材から食品まで幅広い。一例として、神戸製鋼所は6月納入分から溶接材料を10%程度値上げする方針だ。また、カルビーは「じゃがりこ」などスナック菓子68商品を値上げする。店頭での価格は3~10%程度上がる見込みだ。
原材料やエネルギー、物流費が上昇した分の価格転嫁は依然として十分ではない。24年問題に対応するために全国各地でバスの運賃も上昇している。外国人観光客(インバウンド)需要が旺盛なこともあり、飲食や宿泊分野でも値上げの勢いは強い。円安の進行や原油価格の上昇リスクが増しているため、今後も国内企業による値上げは増えそうだ。
食品や日用品の価格が値上がりする一方、実質ベースの賃金は伸び悩み気味だ。2月の実質賃金(速報)は前年同月比1.3%減少し、23カ月連続のマイナスとなった。賃金の上昇ペースは物価上昇に追い付いていない。
24年春闘で大手企業を中心に賃上げの機運が上昇し、一部で大幅なベースアップが実現したことは、個人消費を下支えする重要な変化だった。しかし、中小企業の賃上げは容易ではない。また、基本的にわが国の大幅な賃上げ交渉は年1回だ。賃上げの持続性を判断するには時間がかかる。
短期間で名目の賃金上昇ペースが食料品と同程度か、それを上回る水準に到達する展開は期待しづらい。6月に再度、大幅な値上げが起きると、節約志向を強化する家計は増えるだろう。すると、個人消費の停滞や景気低迷への懸念が高まる。現在のわが国経済にとって、値上げの負の側面が、賃上げ効果を上回る可能性は高い。