この小児科外来診療料というのは、医師が自分で選択できる。出来高を選びたい人は申請しなければいいし、マルメがいいなら申請すればいいのである。途中でチェンジすることもOKだ。
このマルメを使うと必要な検査まで医師はしなくなってしまうものだろうか。ぼくの友人の小児科医に聞いた話だが、その医師は出来高とマルメの両方を経験したことがあるという。で、結果はというと診療報酬はほとんど差がなかったそうだ。つまりマルメだからといって本当に必要な検査を省く小児科医は普通はいないと考えていいだろう。
離乳食前の血液検査なんてムダ
医療費はメリハリのある使い方を
でも国は明らかにこのマルメ制度によって医療費を削減しようとしている。国からのメッセージとしては、なるべく検査や処置や処方は減らしてくれということだろう。ぼくのクリニックは開院からずっとマルメである。その理由は、医療事務のスタッフがその方が楽だろうと思ったからだ。ただ、ぼくは子どもに痛い検査をすることや、被曝するX線撮影をすることや、やたらと薬を出すことが嫌いなので、この方が合っていたかもしれない。
![書影『開業医の正体 患者、看護師、お金のすべて』(中公新書ラクレ)](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/0/5/200/img_05ba2486a10932ff9fd464741304187e85406.jpg)
松永正訓 著
これから先も国は医療費を削ろうと躍起になってくるはずだ。財政の健全化のためにはとても重要なことではあるが、それによって患者に対する医療サービスが低下するようなことがあってはならない。その一方で、明らかに不要な医療はどんどん削るべきである。薬漬けはなくなったが、無駄な検査はまだあるのではないか。
たとえば、子どもが離乳食を始める前に、血液検査で食物アレルギーの有無を調べる必要があると思っている親がいる。これは基本的に間違い。採血しても食物アレルギーの予測はつかない。こうした検査を積極的にやっている医者に問題があると言わざるを得ない。痛いだけで意味なしの検査は、子どもにとって迷惑でしかない。
以上の話は、うちのクリニックのスタッフに診療報酬の点数を教わりながら書いた。