食後10時間経っても血中に
糖が残るほどのインスリン不足

 第2ステップは、インスリンの分泌のタイミングが遅れるだけでなく、分泌される量も減ってくる段階です。

 メタボがあったり、運動不足が続いたりしてインスリン抵抗性が高まった状態に加えて、たくさん食べていると、膵臓のβ細胞がますます疲弊してインスリンを出す力がさらに弱まってきます。すると食後に、遅れながらも何とか分泌してきたインスリンさえも出せなくなってしまい、インスリンの分泌量が減ってくる段階に移行します。

 そうなると、HbA1cに加えて、空腹時血糖値も少しずつ上がってきます。必要な量のインスリンを分泌できなくなってくるので、時間をかけても血糖値を下げきれなくなるのです。

 さらに進んだ第3ステップは、膵臓のβ細胞からインスリンを出せなくなる段階です。この段階になると、血糖値が高い状態のまま下がらなくなります。こうなると本格的な糖尿病です。注射などで外からインスリンを足さなければ血糖コントロールができなくなります。

 初期のメタボでは、インスリンの追加分泌は遅れますが、基礎分泌は問題がないことが一般的です(第1ステップ)。そもそも太っているということは、インスリンが出ているということです。食後に血糖値が上昇しても、ゆっくり分泌されるインスリンのおかげで、時間さえかければ血中の糖は処理されるので、空腹時血糖値は上がりません。

 この段階では、一気にインスリン分泌を要求するような食生活(例えば、スイーツやアルコールなど)を控えたり、筋肉をよく動かしたり、また内臓脂肪を減らしてインスリン抵抗性を改善したりすれば、膵臓のβ細胞の負担を軽くすることができます。しかし、HbA1cに加えて空腹時血糖値も上がってくると、第2ステップの入り口です。これがCさんの状態です。

 空腹時血糖値も上がっているということは、食後10時間たってもブドウ糖がたくさん血液中に残っているということ。つまり「10時間かけてもブドウ糖を処理できないほど、インスリンが足りない」状態です。

 インスリンの反応が遅くなっていることに加え、分泌量も低下しているのでしょう。実は、これこそが、これから本当の糖尿病になるのか、元に戻れるのか、というとても大事な段階なのです。