「先輩社員は、彼らの未熟な面や不安をこれまで以上に汲み取りながらコミュニケーションを取ってほしい。AIチャットボットが適切なデータを取得することで進化していくように、彼らは適切なアドバイスを受けることで、想定を超える成果を発揮する可能性に満ちている」

 とのことで、ここでもまたコミュニケーションの配慮が促されている点は非常に印象深いところです。

 さて、これらの調査結果から導き出せる若手世代とのコミュニケーションの要点は、「多様な価値観への理解」をベースにした「寛容なコミュニケーション」であり、彼らのちょっとしたプラスの変化や長所に対する「承認の姿勢」といえます。

 それによって職場の心理的安全性を高め、彼らの一歩踏み出すアクションを促すことができれば、上司や先輩に対する信頼感は増していくはずです。

 誰もが部下時代に経験したかもしれませんが、そもそも部下と上司ではアクセスできる社内の情報に大きな格差が存在しますし、部下の数が増えれば増えるほど、1人あたりの部下に割ける時間も配慮もコミュニケーション量も少なくなりがちです。

 部下の知見や視座が、上司や先輩世代からすれば「レベルが低い」と感じることもあるでしょう。仮に部下が様々な疑問や不満を抱いていたとしても、組織的なヒエラルキーや発言力の差により、すべてを上司に伝えることが叶わないケースもあります。

書影『「部下の気持ちがわからない」と思ったら読む本』『「部下の気持ちがわからない」と思ったら読む本』(ハーパーコリンズ・ジャパン)
新田 龍 著

 それによって、部下時代に「なぜ上司はわかってくれないんだ!?」と不本意な思いを抱き、「自分はもっと部下に理解のある上司になるんだ!」と心に決めた人も少なくないはず。今こそ、その考えを行動に移すべきです。

「そうはいっても、日々多忙な中で、いちいち部下をケアして、配慮したコミュニケーションなど取っていられない」と思われるかもしれませんが、だからこそちょっとした配慮が大きな差を生みます。

 それらの配慮によって、部下や若手があなたを信頼すれば、自分自身の仕事を進めやすくなります。それが成功体験となり、横展開していくと、あなたの組織も良い方向に大きく変わっていく契機にもなります。

 ぜひ、あなたから、その一歩を踏み出して頂ければ幸いです。