なぜロシア人は
ウォッカを飲むのか
世界のジョークでロシア人と言えば、やっぱり「酔っ払いキャラ」。酒にだらしないが、どこか憎めないキャラクターとしていい味を出している。
酒好きとして知られるロシア人だが、そもそもキエフ・ルーシ時代のウラジーミル一世が国教をギリシア正教と定めたのも、禁酒を説くイスラム教を避けたためだとも言われているから、かなりの筋金入りである。
ロシアの酒として有名なのが、言わずと知れたウォッカ。日本ではかつて「火酒」と呼ばれていた。無色透明の極めて強い酒である。
ウォッカは穀物を原料とした蒸留酒で、アルコール度数は40度ほどが一般的だが、中には96度という銘柄もある。
ただし、「ウォッカ(vodka)」という単語は、ロシア語で「水」を意味する「ヴァダー(voda)」に接辞(指小辞)が付いたもの。指小辞とは名詞や形容詞に付けて「小ささ」や「愛らしさ」といった意味を表すもので、例えば大阪で「飴」のことを「飴ちゃん」と呼ぶのがそれに当たる。そう考えると、ロシアにおいてウォッカとは「お水ちゃん」。つまり「ウォッカ」と「ウォーター」は同じ語源を持つ単語ということになる。ロシア人が水のようにウォッカを飲むのも当然というべきか。
日本ではカクテルのベースに使われることが多いが、ロシアでは「リュームカ」と呼ばれるショットグラスに注ぎ、ストレートで一気に飲み干す。ロシア人はウォッカを「味」よりも「酔い」のために飲むとも言われる。
19世紀のロシアでは、政府歳入の約3割が酒税だったとも。「酔っ払い」がヘベレケになりながら、国家の財政を支えたことになる。また、第二次世界大戦の際には、兵士たちの士気を高めるため、前線にウォッカが支給された。兵士たちは笑顔で飲み干したという。
どんな圧政下でも、どれほど生活が貧しくても、あるいは明日をも知れぬ戦場であっても、ロシア人はウォッカを胃に流し込み、アネクドート(笑い話)を交わし合って、日々を過ごしたのである。
ロシア人の本質とは、ウォッカとアネクドートにあるのかもしれない。