中堅が持つ平成のタテマエ
「効率化」と「成果主義」
1990年代後半から、組織は平成モデル(これは私が便宜上つけた名前です)に変わっていきます。キーワードは効率化と成果主義です。
私はこの時期に人事コンサルタントになりました。主にやっていたのは人事制度の策定でした。給与を決める評価に、定量評価(数値で見える評価)や目標管理(目標を決めてその達成度を評価する仕組み)が入ってきたころです。
1人に1台のパソコンが普及してきたこともあって、資料での説明も含めて、成果をできるだけ目に見えるもので示さなければならない流れが生まれました。
大きな売り上げをあげられない部署は、コストダウンや標準化・効率化で評価をとりにいきます。社会全体として低成長時代に入ったので、できるだけ効率化して利益を出そうとします。
この流れのなかで、社員には「できるだけ効率的に、目に見える成果を出すことが大事」という信念が埋め込まれていったのです。そして、効率的でない動きにはイライラしてしまうとか、目に見える成果がイメージできないものは許さないといった空気が広がりました。
そのせいで、見えない答えに向かってチャレンジする気風は、社内からだんだんと消えていきます。チャレンジとは、やる気が表に引き出された姿ですが、この平成のタテマエによって、思い切った発言や行動が封殺されてきたのです。
トラワレから作られた
「枠内思考」を自覚する
20年も組織に関わっていると、企業で働く人の変化を感じます。
以前はお客さん先で自由に何でも話していい「気楽でまじめな話し合い」を展開すると、私の冒頭の説明も何も聞かず、現状の不満や批判が爆発することが何度もありました。すごいエネルギーがあったのです。そのエネルギーの素は、「変な管理をするな。俺に好きなように仕事をやらせろ!」だった気がします。
それがここ10年くらいは「いまを安心して過ごせればいい」という欲求が、多くの人の気持ちの大部分を占めるようになったように感じます。
気合と根性の強制を感じると嫌気がさし、効率的に目の前の成果を求められ、手が届く範囲の仕事で納める──こんな心境なのかもしれません。
昭和のトラワレと平成のトラワレが共通して働く人の考え方を強化していったものがあります。