家庭裁判所調査官も、就職当初は行政の国家公務員総合職と同等程度だが、専門職として自由度が非常に高く、地位の上昇とともに、一般の行政職の給与を引き離していく。

 家庭裁判所調査官は裁判官の調査命令に基づいて、少年非行や家事調停の事件を担当し、その調査を開始する。しかし、家庭裁判所調査官は、親権の帰属に関する家族や面会交流に関する家族の調査などを担当していても、あえて言えば、自分の子育てのスケジュールを配慮して家庭訪問や試行面接などの日程を決めることができる。

 圧倒的多数を女性が占める家庭裁判所調査官の育休の取得率は高く、そのことは書記官についても同様である。筆者が家庭裁判所家事調停委員として配属されていた家庭裁判所では、所属する家庭裁判所調査官の4分の1から3分の1は常時、産休または育休の取得中であった。

 そうした場合、家庭裁判所調査官を定年退職した人が産休補助職員として勤務する。したがって、従来、60歳で定年退職した家庭裁判所調査官は、通例として家事調停委員となっていたが、今やその数は激減した。元家庭裁判所調査官は家庭裁判所調査官の臨時雇用となっている。

 一般企業の模範となる恵まれた労働環境であるが、利用者である国民にしわ寄せがいくこともある。現状では、裁判所の仕事が回らないと述べる部総括の裁判官もいるほどであり、あえて言うならば、裁判所に勤務する人のための裁判所になってしまわないような工夫が必要である。

 一例をあげよう。

 調停の直前や当日に、担当の家庭裁判所調査官が予定されていた調停を、家庭の事情でキャンセルする。担当ケースは個々の家庭裁判所調査官に割りふられている。

 代わりの家庭裁判所調査官が出席はするものの、担当ではないので、何も具体的なことは発言できない。そのため、今回せっかく当事者に来てもらった調停が実質的に無駄になる。

高待遇の裏で利用者にしわ寄せ
誰がために裁判所はある?

 子どもや親子関係のことを考えると、できるだけ早く面接をし、面会交流を再開する必要がある。

 親権者等を決定するための調停を早く進める必要があり、当事者たちもその気持ちが強いにもかかわらず、予定が立てられない。