孫子も「敵を知り己を知れば、百戦してなお危うからず」と言っているように、闘いに臨む前には、敵について調べるのは当然なのに、面接官のことをわからずに臨むのでは結果は明らかです。

 一方、「就活テク」に染まりすぎるのもNGです。誤ったもの、面接官から見るととんでもないものも平気で流布しているからです。

 たとえば短所を聞かれたとき、
「短所は長所の裏返しなので、この短所も長所だと思っています」

 といった「短所→長所置き換え話法」が典型です。

 面接官は「短所などない、すごい人間にだけ面接に来てほしい」のでしょうか?
違いますよね。

 人間なら誰にでもある短所について話してもらって、人となりを知ろうとしているのです。相手を理解せず、自分本位で一方的な回答をすると心証を悪くする場合が多々あるのです。

○どこまで本音を言っていい?

 面接は、企業側・学生側の両方の本音と建前が交錯する場です。

 たとえば、民間企業の面接で志望業界を聞かれて、「本命は公務員で、公務員以外は考えておりません。面接慣れするために、試しに一般企業を受験したまでです」と本音を言う人はいないし、面接官もこんな「本音」は聞きたくないでしょう。

「嘘も方便」と言うように、双方とも常識的な範囲であれば建前や嘘を言うことが認められている場所と言えます。ただし、就活生にとっては、本音と建前をどの程度使い分ければ良いのか皆目見当つかないというのが、実際のところでしょう。

 建前論ばかりでは、面接官の琴線に触れないことも多いです。このあたりのさじ加減は正直、かなり難しいです。

 心配はいりません。本書は、頻出の質問に込められた面接官の本音や意図を、一つひとつくわしく説明していきます。あわせて、今の就活生に合った攻め方を徹底的に解説します。盛ったり嘘をついたり、誤った「就活テク」に乗った回答と本質的に異なる回答が、誰でもできるようになります。