<正解>

 Cは「合計は15?」と質問する

「監禁からの脱出」タイプの第2弾です。
 ポイントとなるのは「質問と答えは全員が聞き取れる」という点。
 つまり、「Cの質問に対する回答を聞いた誰かが正解に辿り着く」という可能性もありそうですが……。

まずは可能性を洗い出す

 まずは「可能性の洗い出し」、これが鉄則でしたね。
 今回のシチュエーションでは、以下の情報がわかっています。

 ・各部屋には「最小1」「最大9」のリンゴがある
 ・各部屋のリンゴの個数はすべて異なる

 つまり、3部屋のリンゴの合計数としてあり得る範囲は、

 最小:1 + 2 + 3 = 6
 最大:7 + 8 + 9 = 24

 となります。
 すなわち正解は、

 6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24

 のいずれかですが、気が遠くなるのでもう少し減らしたいところ。

悪魔の回答で選択肢を絞る

 AとBが悪魔にした質問の答えも、大きなヒントになります。

 “A「合計は偶数?」 悪魔「いいえ」”
 “B「合計は素数?」 悪魔「いいえ」”

 A,Bの質問により、正解の選択肢から偶数と素数が除外されます。
 すなわち正解は、

 9,15,21のいずれかです。

 よしよし、3択ならなんとかなりそう。
 ちなみに、ここまでは与えられた情報によって辿り着けるため、当然、A,B,Cの3人とも「正解は9,15,21のどれか」ということまではわかっています。

もしもリンゴが「9個」なら?

 正解を3つまで絞れましたが、本題はここから。
 Cは1回だけ質問し、悪魔はそれに「はい」か「いいえ」で答えます。
 つまり、悪魔の答え方は2パターンしかないのに、選択肢は3パターンあるわけです。
 どうすればいいのでしょうか。

 そこで、残された選択肢「9,15,21」について、それぞれが正解だったときに3人はどのように考えるかを検証してみましょう。
 論理的思考の基本、「仮定と検証」です。

 まずは、正解が「9」だった場合。
 Cの部屋にはリンゴが「5つ」あるため、AとBの部屋には合計「4つ」のリンゴがあることになります。
 そして、各部屋のリンゴの数はすべて異なるという条件から、どちらかの部屋にはリンゴが「1つ」あり、もう片方には「3つ」あるとわかります。
 このとき、リンゴが「1つ」ある部屋にいる人は、こう考えるでしょう。

「私の部屋にはリンゴが1つある」
「つまり、3部屋の合計としてありえる最大数は1 + 8 + 9 = 18」
「そして最小数は1 + 2 + 3 = 6」
「ということは、残った選択肢のうち、正解は21にはなりえない」
「答えは9か15のどちらかだ」

 また、リンゴが「3つ」ある部屋にいる人も、こう考えるでしょう。

「私の部屋にはリンゴが3つある」
「つまり、3部屋の合計としてありえる最大数は3 + 8 + 9 = 20」
「そして最小数は3 + 1 + 2 = 6」
「ということは、残った選択肢のうち、正解は21にはなりえない」
「答えは9か15のどちらかだ」

 つまり、正解が「リンゴ9個」の場合は、AとBは「リンゴの数は9か15だ」まで自力で絞り込めます。

もしもリンゴが「15個」なら?

 次に、正解が「15」だった場合について。
 Cの部屋にはリンゴが「5つ」あるため、AとBの部屋には合計「10」のリンゴがあることになります。
 そして、各部屋のリンゴの数はすべて異なるという条件から、AとBの部屋のリンゴの数の組み合わせとして考えられるのは以下となります。

 1 - 9
 2 - 8
 3 - 7
 4 - 6

 ……うん。
 正解が「9」のときと比べて、パターンが複数になってしまいました。
 それぞれ検証していくことはできますが、かなり面倒です。

 ここで、検証するときの原点を思い出しましょう。
 それは、「極端な例」から検証していくことです。
 そのため、正解が「15」だった場合のことはいったんスルーして、選択肢のなかで最大数である「21」の場合を先に考えてみましょう。

 面倒な場合は後回しにすることも、ときには大切です。

もしもリンゴが「21個」なら?

 では、正解が「21」だった場合を考えてみます。
 Cの部屋にはリンゴが「5つ」あるため、AとBの部屋には合計「16」のリンゴがあることになります。
 各部屋のリンゴの数はすべて異なるという条件から、どちらかの部屋にはリンゴが「7つ」あり、もう片方には「9つ」あるとわかります。
 お、パターンが絞られましたね。
 これなら検証は簡単です。

 このとき、リンゴが「7つ」ある部屋にいる人は、こう考えるでしょう。

「私の部屋にはリンゴが7つある」
「つまり、3部屋の合計としてありえる最大数は7 + 8 + 9 = 24」
「そして最小数は7 + 1 + 2 = 10」
「ということは、残った選択肢のうち、正解は9にはなりえない」
「答えは15か21のどちらかだ」

 また、リンゴが「9つ」ある部屋にいる人も、こう考えるでしょう。

「私の部屋にはリンゴが9つある」
「つまり、3部屋の合計としてありえる最大数は9 + 8 + 7 = 24」
「そして最小数は9 + 1 + 2 = 12」
「ということは、残った選択肢のうち、正解は9にはなりえない」
「答えは15か21のどちらかだ」

 つまり、正解が「リンゴ21個」の場合は、AとBは「リンゴの数は15か21だ」まで自力で絞り込めます。

Cが消すべき「可能性」とは

 ここまでの検証をまとめると、あることがわかります。

 ・正解が「9」なら、AとBは「答えは9か15」まで辿り着ける
 ・正解が「21」なら、AとBは「答えは15か21」まで辿り着ける

 ということは、Cがやるべきことは、

 他の2人の迷いを断ち切ってあげることです。

 そのためCが悪魔にすべき質問は、こうです。

「リンゴの合計は15個ですか?」

 この質問に悪魔が「はい」と言えば、答えは15個。
「いいえ」と言えば、答えは「9か21」となります。
 ですが正解が9もしくは21の場合は、AとBは先ほど説明した思考によって、それぞれ答えを「9か15」「15か21」まで絞れます。
 そして答えは15ではないと悪魔が答えているため、おのずと正解が導けます。

最後まで答えがわからないC

 この問題の面白いところは、質問をしたCには最後まで答えがわからないということです。

「合計は15ですか?」と聞いて、悪魔が「いいえ」と言ったとき、答えは9か21に絞られたということは、Cもわかります。
 そして、Cの部屋にはリンゴが5つあります。
 Cが考えうる3部屋の合計数の最大と最小は、以下です。

 最大数:5 + 9 + 8 = 22
 最小数:5 + 1 + 2 = 8

 このように、9も21も正解としてありえてしまいます。
 だから正解が15ではないとわかっても、「9なのか21なのか」はCにはわかりません。
 ですが、A,Bのどちらかがかならず正解してくれるのです。

「思考」のまとめ

 状況を俯瞰して、「自分ではなく他の2人が解答できる」という可能性に気づけたら、自分の役割が見えてくる問題でした。
 柔軟に発想する水平思考も少し必要でしたね。

 Cの視点になると、「私がこう質問すれば、きっと他の2人は答えまで辿り着いてくれるはず」と考えないとできない質問です。
 思考力だけでなく、仲間の論理的思考を信じる勇気も必要なのがいいですね。
 最終的には、勇気がないと解決できない問題でもありました。

 ・他人の脳内にある可能性まで俯瞰して考えると、ひとつしかないと思い込んでいた方法とは別の手段が見つかることがある

(本稿は、『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から一部抜粋した内容です。)

野村裕之(のむら・ひろゆき)
都内上場企業のWebマーケター。論理的思考問題を紹介する国内有数のブログ「明日は未来だ!」運営者
ブログの最高月間PVは70万超。解説のわかりやすさに定評があり、多くの企業、教育機関、テレビ局などから「ブログの内容を使わせてほしい」と連絡を受ける。29歳までフリーター生活をしていたが、同ブログがきっかけとなり広告代理店に入社。論理的思考問題で培った思考力を駆使してWebマーケティングを展開し、1日のWeb広告収入として当時は前例のなかった粗利1500万円を達成するなど活躍。3年間で個人利益1億円を上げた後、フリーランスとなり、企業のデジタル集客、市場分析、ターゲット設定、広告の制作や運用、セミナー主催など、マーケティング全般を支援する。2023年に現在の会社に入社。Webマーケティングに加えて新規事業開発にも携わりながら、成果を出している。本書が初の著書となる。