現場発のアイデアがたちどころに全国に広がる。現場の改善要望の声に直ちに本社が対応する。助けを求めると日本中から返事がある。転勤先の事情を現地のメンバーが教えてくれ、どこに行っても知り合いがいる。

 お堅い保険会社の巨大な組織で、社員が自由闊達にSNS上でコミュニケーションを交わし、それを経営者が後押ししていると、にわかに信じられるだろうか。

 損保業界2位、従業員数(単独、2009年3月末)17,042人、売上高1兆2904億円(単独、2009年3月期)の株式会社損害保険ジャパンは、全国8百拠点にまたがる大組織を社内SNSでつないでいる。

 二回に渡り、どのようにして今日のコミュニケーション活性化に至ったのか、その道のりと成功の要因について見ていきたい。

危機感が醸成した
社内コミュニケーションの問題意識

 今世紀に入っての損保ジャパンは激動の連続だった。

 業界再編の波の中、2002年7月に 安田火災と日産火災が合併して損保ジャパンが発足。2002年12月には大成火災と合併した。

 複数企業の統合、組織の肥大化、そして競争激化と結果の追求。変化の渦の中で、問題意識も顕著になっていった。人のつながり、そして情報・知識の活用に、滞りがあるという課題である。