春は大学進学や新卒入社、異動などを機に新たな土地に移り住む人が多い季節。新生活の基盤となる住まいは大切な場所だが「外国籍」や「障害者」など個人の属性によって、住居を得にくい人々がいる。住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」を運営するLIFULLは2019年から、部屋探しが難しい人々をサポートするサービス「FRIENDLY DOOR」を展開し、社会課題の解決に取り組んでいるという。(清談社 真島加代)

部屋探しが困難な
「住宅弱者」とは?

「賃貸物件を借りにくい人」と聞いて、どんな人物像を思い浮かべるだろうか。LIFULLが行ったアンケート調査(*)によると、高齢者や在日外国人、被災者やシングルマザー・ファザーなどの60.4%が「住まいを探す際に不便を感じたり、困ったりした経験がある」と回答したという。

(*)…2022年度 住宅弱者の「住まい探し」に関する実態調査(株式会社LIFULL)/調査期間:2022年4月15日~4月20日/調査方法:インターネット調査/直近2年以内に国内での賃貸契約を行った1534名(うち住宅弱者1322名)

「政府は、そうした悩みを抱えている人々を『住宅確保要配慮者』と定義しており、当社では住宅要配慮者のカテゴリーに、LGBTQやフリーランス、家族に頼れない若者たちも加えて『住宅弱者』と呼んでいます。住宅弱者層は、不動産の選択肢が極端に少なく、一般層に比べて入居審査が落ちやすいため、なかなか部屋が借りられません」

LIFULL LIFULL HOME'S事業本部 FRIENDLY DOOR責任者の龔 軼群(キョウ イグン)氏LIFULL LIFULL HOME'S事業本部 FRIENDLY DOOR責任者の龔 軼群(キョウ イグン)氏 撮影:清談社

 そう話すのは、LIFULL LIFULL HOME'S事業本部 FRIENDLY DOOR事業責任者の龔 軼群(キョウ イグン)氏。同社が行ったアンケートには、以下のようなコメントが届いている。

「気に入った物件があったが、不動産会社に問い合わせた際、その年齢では審査に通らないので、その物件は諦めるように勧められた」(女性60代以上)

「外国籍のため、大家さんに断られたことがあります。また、日本人の緊急連絡先が必要とのこと。連絡する相手がいないと必ず断られます」(女性30代)

「精神障害者ということで契約が破棄になったり『精神障害者には貸せる物件はない』といわれたりしたことがある」(男性40代)

 住宅弱者たちは、こうした苦い経験をしても声を上げないため、問題が表面化しにくい、とキョウ氏。「自分はマイノリティーだから仕方ない」と諦め、口をつぐむ人が多いという。

「住宅弱者が部屋を借りにくい理由は、バックグラウンドごとに異なります。高齢者の場合は孤独死リスク。外国籍の人は、ゴミ捨てやマナーなど文化の違いが懸念され、LGBTQの人々に関しては同性カップルに対する偏見などが入居審査に影響を及ぼしています。たしかに高齢者の孤独死はオーナーにとって負担になる面もありますが、若い人よりも長く住んでくれるというメリットもあるんです。今後人口減少が進む日本で、負の面だけを見て住宅弱者の入居を拒否していると、物件の空室リスクがさらに高まります」

 部屋が借りにくい人がいるにもかかわらず、地方では空き家や賃貸物件の空室が社会問題になっている。キョウ氏は「日本の不動産業界は大きな矛盾を抱えている」と指摘する。