<正解>

「1,1,7」

 少し難しい問題ですが、本書の後半で必要になる「ある思考」が得られるので、じっくり考えてみてください。
 それにしても、監禁しておいてさまざまなヒントをくれる悪魔、怖いんだか優しいんだか……。

ややこしい状況の確認から

 与えられている情報は多いですが、ちょっとややこしいので、まずは要点を確認しておきましょう。

 “3つのダイヤル錠は共通の数字で解除できる”
 “正解となる数字は「000~999」のいずれか”

 つまり、正解は「256」とか「489」といった3桁の数字であり、それによって、すべてのダイヤル錠が解除できます。

 “3桁の数字を合計すると9になる”
 “すべての桁の数字が、左の桁の数字以上の数字である”

 すなわち「1,2,6」なら、1+2+6=9と、合計して9になるので正解の選択肢に含まれます。
 ですが、「5,8,9」だと、5+8+9=22なので正解ではありえません。
 また、「すべての桁の数字が、左の桁の数字以上の数字」とあるので、たとえば「2,2,5」なら2≦2≦5となるので正解の選択肢に含まれます。
 ですが、「5,2,2」だと1桁目が2桁目の数字より大きくなってしまうので、正解ではありえません。

 “Aに左の桁、Bに中央の桁、Cに右の桁を教えた”

 これはつまり、答えとなる3桁の数字のうち、Aの視点から見ると「A,?,?」、Bの視点から見ると「?,B,?」、Cの視点から見ると「?,?,C」が、それぞれわかっているということです。

 もちろん3人は、全員これらを理解しています。
 それによって、まずはBが脱出できたことが最大のヒントになります。

選択肢は意外と少ない

 さて、では正解を考えていきましょう。
 正解となる数字は「000~999」のどれかですが、

 ・3桁の数字を合計すると9になる
 ・すべての桁の数字が、左の桁の数字以上の数字である

 という条件から、実際にありえる数字の組み合わせは意外と少ないのです。
 すべてを書き出してみても、たぶんそんなに時間はかかりません。
 ということで……洗い出しましょう!
 まずは最小である0から、「左の桁が0で、中央も0の場合、右の桁は9だな」など、1つずつ考えていきます。

 左の桁が4の場合、中央の桁は4以上、右の桁も4以上でなくてはいけませんが、そうすると合計で9を超えてしまいます。
 つまり、左の桁は最大で3だとわかります。
 このように洗い出していくと、選択肢は以下の12パターンになります。
 ダイヤル錠を解除する数字は、このなかのどれかです。

 ・0,0,9
 ・0,1,8
 ・0,2,7
 ・0,3,6
 ・0,4,5
 ・1,1,7
 ・1,2,6
 ・1,3,5
 ・1,4,4
 ・2,2,5
 ・2,3,4
 ・3,3,3

即座に脱出できる「組み合わせ」

 表を見るとわかるのが、

 誰かが即座に正解できる「組み合わせ」がある

 ということです。
 なぜなら3人は、悪魔からそれぞれ1桁ずつ、正解の番号を聞いているからです。

 たとえば、答えの数字が「0,0,9」だった場合。
 悪魔はAに「左の桁は0」と、Bに「中央の桁は0」と、Cに「右の桁は9」だと教えています。
 このとき、先ほどの表のなかで「中央の桁が0」「右の桁が9」になる組み合わせは「0,0,9」しかありません。
 すなわち、Bは自分が聞かされた数字が「0」なら、すぐに正解が「0,0,9」だとわかります。
 同じように、Cも自分が聞かされた数字が「9」なら、AとBの数字がいずれも「0」であるとわかります。

 答えが「0,1,8」と「3,3,3」だった場合も同様です。
 右の桁が8になるのは「0,1,8」だけ、3になるのは「3,3,3」だけなので、この場合、右の桁を知っているCが即座に解答できます。
 つまり正解の数字が「0,0,9」「0,1,8」「3,3,3」のいずれかであれば、3人のうち誰かが即座にダイヤル錠を解除できます。
 しかし、そうはならなかった。
 このことから、正解となる数字は「0,0,9」「0,1,8」「3,3,3」を除いた以下の9パターンに絞り込まれます。

 ・0,2,7
 ・0,3,6
 ・0,4,5
 ・1,1,7
 ・1,2,6
 ・1,3,5
 ・1,4,4
 ・2,2,5
 ・2,3,4

なぜBが最初に解けたのか

 さて、この段階でBは正解に辿り着きました。
 表にある組み合わせの、中央の桁に注目してください。
 中央の桁が「2」「3」「4」の場合、他にも選択肢があるのでBには正解がわかりませんが、中央の桁が「1」のときのみ、選択肢は「1,1,7」に絞られます。

「0,1,8」という可能性もありましたが、その場合Cは即座に答えがわかるはずなのに解答しなかったため、この選択肢は消えました。
 よって正解は「1,1,7」しかありえないとBは確信できたわけです。
 つまり、ダイヤル錠を解く数字は「1,1,7」であり、それに唯一気づけたBが、最初に部屋から脱出しました。

無事、全員脱出へ

 さて、Bがダイヤル錠を解除できたことを知ったCは、これと同じ思考を辿ります。
 正解の数字は「1,1,7」だったので、Cは悪魔から「右の桁は7」と聞いているはずです。
 右の桁が「7」になる組み合わせは、正解の「1,1,7」以外に、「0,2,7」も考えられます。
 ですがBが脱出したことで、Cは気づきました。

 「もし正解が0,2,7だとしたら、Bは正解を絞り込めるはずがない。ということは、正解は0,2,7ではなく、1,1,7だ」

 そして、Cもダイヤル錠を解除できました。

 Aも同様の思考によって答えがわかります。
 Aは悪魔から「左の桁は1」と聞いていました。
 そしてBが脱出できたことで、「中央の桁は、選択肢が絞れない2や3や4ではなく、1だ」とわかり、Aも答えは「1,1,7」だとわかったのです。
 これで、全員脱出できました。

「思考」のまとめ

 これは、NSA(米国国家安全保障局)のサイトから趣旨を引用した問題です。
 CIA(米国中央情報局)と並んでアメリカ最高峰の頭脳が集う、あのNSAです。
 人材採用も兼ねているサイトで出題されていたので、自力で解けた人は、NSAの採用試験に挑戦する資格があるかもしれませんね。

 ここまでの「力を合わせて監禁から脱出する」タイプは、どれも、他者の脳内にある情報まで俯瞰できるかどうかが鍵になっていました。
 この思考は、書籍の「第5章:多面的思考」でさらに深めていきますので、ここで感覚をつかんでおけるとよいと思います。

 ・自分以外の人の思考まで俯瞰できていると、他者の行動の意図や理由がわかり、そこからもヒントを得られる

(本稿は、『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から一部抜粋した内容です。)

野村裕之(のむら・ひろゆき)
都内上場企業のWebマーケター。論理的思考問題を紹介する国内有数のブログ「明日は未来だ!」運営者
ブログの最高月間PVは70万超。解説のわかりやすさに定評があり、多くの企業、教育機関、テレビ局などから「ブログの内容を使わせてほしい」と連絡を受ける。29歳までフリーター生活をしていたが、同ブログがきっかけとなり広告代理店に入社。論理的思考問題で培った思考力を駆使してWebマーケティングを展開し、1日のWeb広告収入として当時は前例のなかった粗利1500万円を達成するなど活躍。3年間で個人利益1億円を上げた後、フリーランスとなり、企業のデジタル集客、市場分析、ターゲット設定、広告の制作や運用、セミナー主催など、マーケティング全般を支援する。2023年に現在の会社に入社。Webマーケティングに加えて新規事業開発にも携わりながら、成果を出している。本書が初の著書となる。