右派政権も分裂と内部対立を繰り返している

 日本人の立場からすると、何かにつけて反日の姿勢を見せる左派政権は敬遠したくなるのだが、だからといって右派が良いとも単純には言い切れないところがある。韓国人自身もまた「右か左か」というだけではない複雑な政治感情を持っているようだ。

 左派の李氏・曹氏に対して否定的な見方をする人が多い半面、彼らの勢いの良さや情に訴えかけるパフォーマンスに心を動かされた人も多かった。そして与党「国民の力」へ不満や失望感を持つ人も多かったからこそ、今回の選挙で左派陣営が躍進できたのだろう。

 韓国の国民は、左派・右派を問わず、政治家の言動や選挙戦術に簡単に心を動かされがちだが、同時に両陣営に対する失望感も強い。結果として、政権が左派でも右派でも、韓国政治に本当の意味での「安定」はもたらせないのではないかと危惧する国民が多数に上る。

 実際、右派陣営も、分裂や内部対立が後を絶たない。かつて尹錫悦氏と協力関係にあった若手の李俊錫(イ・ジュンソク)氏は、性接待疑惑で「国民の力」の党員資格を停止され、さらに尹氏や党を批判して追放された経緯がある。中道派「改革新党」の党首に転じた李俊錫氏は現在、尹政権へ激しい敵対心を燃やし続けている。また、医師出身で実業家から政治家に転身した安哲秀(アン・チョルス)氏も、右派や中道の党を渡り歩きながら、大統領選で常に出馬しては途中撤退を重ね、中途半端な存在となってしまった。

 ある右派のグループは、今回の選挙後、「親北(北朝鮮支持派)の左派を撲滅させるために、今こそ団結して大統領を助けよう」というメッセージを支持者に向けて送っていた。しかし実際には、左派も右派も、歩み寄ったり、協力関係を模索したりという姿勢は皆無で、相反する者は徹底的にたたき、分断をあおることにばかり熱心という印象だ。その結果、北と南の分断だけでなく、韓国国内でも国が分断されていることを強く感じるし、国民もそれに扇動されるかのように、出身地域や年代、性別などによっても分断・対立が生まれているありさまだ。

 要するに、どの政党も分裂と対立を繰り返しているのが実情なのだ。左派も右派も「国民ファースト」「国家ファースト」にはなっていない。韓国政治に「安定」を真にもたらす政党は、いつか現れるのだろうか?