2023年日本一の大きな要因
中野の二塁コンバート成功

 適材適所は、あらゆる組織における黄金法則である。岡田のような一流のリーダーはメンバーの適材適所を重視してチームの力の最大化を実現することだけを考えている。

 たとえば遊撃を守っていた中野拓夢を二塁にコンバートしたのも岡田ならではの考えが貫かれている。中野の肩に不安があると察知した岡田が二塁にコンバートしたのだ。

 そして、2022年シーズンは控えに回っていた肩に自信のある木浪聖也を遊撃に据えた。結果、この二人の選手の活躍が2023年シーズンの日本一の大きな原動力になったのだ。

 第1次岡田阪神でリーグ優勝に貢献した鳥谷敬は、岡田は「選手の逃げ道をなくしてくれる監督」だと語る。この言葉に続けて、鳥谷はこう語っている。

「岡田監督は選手の働き場所を明確にしてくれる。それは選手目線で見れば、結果を出せなければ自分の責任、という覚悟にもつながるわけです。しかも一度決めたことは貫く。シーズンに入るとケガ人が出るし、不調が長引く選手もいる。言ったことをそのまま実行するのは単純に見えて難しいものですが、岡田監督は決してブレないから、選手たちはやりやすいと思います」

 リーダーならメンバー一人ひとりの役割をわかりやすく伝え、彼らに精いっぱい期待しよう。そうすれば、メンバーは自発的に組織に貢献するパフォーマンスを発揮してくれる。

助っ人に頼らず生え抜き中心
「与えられた戦力」で優勝

 2023年シーズンのプロ野球の発展に最も貢献した監督や選手に与えられる「正力松太郎賞」に岡田が選ばれた。阪神としては吉田義男(1985年)、星野仙一(2003年)に続く3人目の受賞である。選考委員である元広島監督の山本浩二は、こう語っている。

「阪神の岡田監督は、現役時代の豪快なバッティングのイメージがあるが、フォアボールを重視して相手ピッチャーに球数を投げさせて1点差のゲームを勝ちきるなど、内野手出身の監督として1年を通して緻密さを感じる野球をしていた」

 2023年の阪神の日本一の大きな要因は岡田の絶妙な采配であることは明らかである。助っ人に頼らない生え抜き中心のチーム編成を重視した選手固定や、四球を安打並みの査定にすることを首脳陣に直訴して査定アップを勝ち取ったことが、大きく勝利に貢献した。

 与えられた戦力を、いかにして目いっぱい駆使してチームを勝利に導くか。あるいはメンバーの得意と不得意を冷静に判断し、どの局面で誰を起用するか。ここにリーダーである監督の力量が試される。