【リラックスできる正しい立ち方】

(1)背筋を伸ばしたり、胸を張ったりせず、まっすぐに立つ。

(2)足踏みをして、楽に動かせる幅で足を開く。

(3)つま先立ちをして、無理なく上がるところまでかかとを上げる。

*つま先立ちしたとき、最初は安定せず、体が前後・左右にふらつくかもしれませんが、体に余分な力を入れず、自然にバランスが取れる位置を探しましょう。
*力が入ってなかなか安定しない場合は、一度かかとを下ろし、やり直しましょう。
*それでもうまくいかない場合は、支えになるものに触れて行ってみましょう。
*つま先立ちをしたときに「上体が反っている」「頭が前に出ている」「肩が上がっている」とうまくいきません。誰かにチェックしてもらいましょう。

(4)つま先立ちでバランスが取れたら、静かにかかとを下ろす。

*ドスンと下ろすとうまくいきません。
*足の裏は自然に床に付いています。

 このような簡単な方法で、リラックスして安定した立ち方になります。試しに、誰かに胸の辺りを水平方向に静かに押してもらいましょう。姿勢が盤石になっていたら良い立ち方です。グラッとするときは良くない立ち方です。

 多くの人は、普段の姿勢だと、軽く押されただけなのに安定が崩れてしまいます。なぜでしょうか?

 それは、多くの人が、いつも自覚しないままに力んでいるからです。力んでいるつもりはないのに、知らず知らずのうちに、体のどこかに余分な力が入り、バランスが悪くなっています。

 心身統一合氣道では、まずはこのリラックスして安定した姿勢の確認から学びます。なぜなら、姿勢が不安定では、人を「導き投げる」ことができないからです。「相手を投げよう」として力みが生じると、結果として導き投げることができなくなります。人を動かすことを考える前に、まずは自分の姿勢を整えることが重要だということです。

『活の入れ方』『活の入れ方』(幻冬舎新書)
工藤公康 著、九重龍二 著、藤平信一 著

 これはコミュニケーションにおいても同じことです。人の靴の汚れを指摘するならば、まずは自分の靴の汚れを取っておかなければいけないのと同じで、相手を動かしたいならば、まずは自分の姿勢が整っていなければいけません。ところが、相手を思い通りに動かすことで頭がいっぱいのときは、自分自身の土台を失っているのです。

 姿勢は心の状態が大きな影響を与えています。せっかく盤石になった姿勢も、心が乱れて上ずってしまうと台無しになります。ゆえに立ち方と「呼吸を静める」ことがワンセットで重要になります。

 アスリートだけでなく、ビジネスパーソンも、効果を実感できます。

 覚えておいて損はありません。朝起きたとき、仕事が始まる前、大事な場面に臨むとき、試合や発表会の前……。さまざまな場面で、この立ち方を実践してみてほしいと思います。