――周りでバンドをやめちゃう人っていらっしゃったと思うんですけど、その人たちってどういう理由でやめられていくんですか?
マサ:ほぼすべて生活かな。生活が苦しいとか。
――カツカツな生活が続きますもんね。
マサ:大変だよね。だってみんながさ、周りの友達が遊んでたりとか酒飲みに行ってるときも、こっちは家で地味にギター弾いたりとか。やっぱ孤独だし、まず感覚が違うから。……やっぱり孤独感みたいのは常に味わうけど、クリエイティブなことする人は、ちょっと孤独じゃないとダメなんだよね。みんなと同じ気持ちだと、それは孤独じゃないから。そういう人はもう新しいことはできない。まあ、その孤独感をどう捉えるか。
また、この不安には夢追いに直接関わるものもある。つまり、いつ実現できるかわからない夢を追い続けることへの不安である。マナブは、売れていくバンドマンたちと自分たちとの違いを比喩的に示しながら、次のように述べた。
――売れていくバンドの人たちって、何か自分たちと決定的に違うというか、そういうのあるんですか?
マナブ:売れてる人たちって、ものすごい勇気を持ってるんだと思います。あの、山頂と山頂をつなぐのが一本のロープだけで命綱もないんですよ。渡ろうと思えば渡れます。でも落ちたら死にますよね。でも行く人間が売れてるなって。
そこ歩いていった人間っていうのは、歩いていった人間たちにしかわからない共通意識があるんですよ。売れてるバンドってなんであんなに仲いいんだろうって。それはたぶん、その道を渡ってきたやつにしかわかんない共通意識があるからなんですよ。その持ってる経験って、そこを渡っていくうえで、渡れなかった人には手が出るほど欲しいことなんですよ。
……でもやっぱり怖いっす、人生賭けるってことは。冷静に考えたらバンドで10年食っていくのって不可能だと思うんです。今はバンドシーンの波が来てるからこそ、こんなにバンドがたくさん売れてる時代だけど、またきっと波は沈んでいくし。そうなったときに、あと数年後にあの人たちは稼ぎがなくなるかもしれないじゃないですか。
それでもいいと思ってやってるから、あんな歌が書けるんだろうし、命綱なんかない、もう登ることしかできないし、でももう中途半端なところまで登っちゃったから今更もうやめても落ちて死ぬだけなんですよ。いけるとこまで登ろうっていうくらいの無謀な考えで、歩いていけるだけの勇気っていうのは要るんじゃないかな。