売れていくバンドマンというのは、「命綱」もつけずに高い山頂の間を渡り切った者たちである。それには「ものすごい勇気」が必要で、達成した者同士は「共通意識」があるため、とても仲が良い。しかし、未だにその「ロープ」を渡ることに躊躇している自分がいる。

 ある種の「無謀さ」とそれを選択できない葛藤が、夢追いへの不安を醸成している。そしてこれらの不安は、まさにバンドを仕事にしようとするからこそ生まれるものである。

夢を仕事にしようとするから
純粋にバンドを楽しめなくなる

リオ:社会人バンドとして楽しむ。正直あのかたちが音楽としては最良のかたちだと思う。なんか、楽器とかバンドって、生きがいとして存在するには最高だと思います。生涯自分の心を豊かにするものに出会えるか出会えないかって、その人の人生の幸せ指数が変わってくると思ってて。で、それを仕事にしようとしてるやつらは、それによって首締められるんですよね。(社会人バンドは)そこの呪縛から離れてるから、めっちゃ楽しんでる。だって、始めたころってすごい楽しいから、たぶんそれに戻ると思って。いいなあって。

――リオさんたちは、事務所つくまでそんな感じの期間だったんですか? 音楽の純粋な楽しさっていうよりは、仕事にしなきゃみたいな。

リオ:うん、そっちの。で、今、仕事になってからも責任は伴うから。もう俺たちの活動は、俺たちだけで尻は拭けないと。会社の人たちを巻き込んでるから。俺らが出す音とか作る曲にその人たちの血が入ってるっていうのを考えるようになってからは、まあ、しっかりしなきゃなっていうのもありつつ、重いみたいな。

――あ、重い。たしかにそうですよね。

リオ:重いなあ、もっと楽に曲が作りてえ。まあでもマインドとして、本当に曲作るときは、「あ、これやってみよう」みたいなところから作ってって、それをかたちにする中で、その、プロ意識を混ぜていくんですけど。まあ、全然その楽しさは、そう、別の楽しさはあれど、人生を豊かにするほうの楽しさではないかなっていう。