『いつまでたってもちゃんとできるようにならないという人の場合、そうした振り返りがないため、気付きが得られず、改善がなされない。それが自然にできないんでしょう。放っておいても自然にできる人と違って、そういったことを促すような教育的働きかけが必要でしょうね』
「なるほど。これまでの人たちはそれが自然にできていたから、私もあまり意識していなかったんですけど、振り返る習慣がないと気付きがありませんね。気付きがなければ改善しないですね」
『だから、それを促すんです』
「手がかかるんですね」
嘆くことで心のモヤモヤがスッキリしてしまう
『もう一つ、注意しておかなければならないことがあります』
「何ですか?」
『自分はうまくできない、などと始終嘆く人の場合、できないことによる心の中のモヤモヤが、人に嘆くことで解消されてスッキリしてしまう、という問題もあるんです』
「嘆くことで気持ちがスッキリしちゃうんですか?」
『ええ、それが自己開示のカタルシス効果です。不満にしても、心配事にしても、誰かに話すことで気持ちが楽になるっていうことがあるでしょう』
「確かに、人に話すと気分がスッキリする、ということはありますね」
『例えば、上司の態度への不満が心の中に渦巻いているとき、同僚に上司への不満を聞いてもらうと、多少とも気分がスッキリしますよね。でも、上司の態度が改善されたわけではない。それでも、不満を吐き出すことでスッキリする。それが自己開示のカタルシス効果です』
「なるほど。分かります。思いを吐き出すだけでスッキリする、っていうの」
『吐き出すことでスッキリするのは、人に対する不満や心配事に限りません。自分が仕事ができず、周囲に負担をかけていることを心苦しく思っている。そんな思いが心の中に渦巻いているのは苦痛だし、気分が良くないですよね。でも、それを人に吐き出すことで、スッキリしてしまう。何も改善されていないのに、気分がスッキリしてしまう』
「それじゃ困るじゃないですか」
『困ってしまいますね。だからこそ、そんな自分の状態に気づくように導き、改善へのモチベーションを刺激してあげる必要がありますね』
そこで、具体的な注意事項について、以下のようにアドバイスした。