実際に、支持的表現療法の研究では、感情抑制・抑圧とそれが引き起こす苦痛を軽減できることが示されています。
支持的表現療法のような治療は、生存に影響を及ぼすかどうかにかかわらず、苦痛を軽減することによって、生活の質を改善する可能性があるといえます。
「察する」文化が
心身を蝕んでいる?
Cさんは感情表現が、悩みの大部分を占めています。
日本の「察する」という文化もあって相手の気持ちを読み取り、彼らの気持ちを踏みにじらないために、最善の配慮をしています。
ただ、この思いやりこそ、自身の感情表現を蝕んでいる可能性があります。
相手が怒るだろう、不愉快だろうと思うと、自分の気持ちを伝えるのをあきらめて、溜め込んでしまいます。
日本人は禁欲的傾向があり、また「より大きな善のため」長期主義的傾向も強く、一時的な感情の満足を遅らせがちです。
この考え方は、さまざまな健康被害につながる可能性があります。
自己開示をしにくい
日本人の国民性
感情の評価理論では、感情は(内的または外的)刺激事象の、知覚された性質に基づく一連の評価を通じて引き出され、区別するとされます。
悲しみ、怒り、恐怖のような否定的感情は、目標の妨害/不快──つまり、望ましくないことが起こったときの、評価によって特徴づけられます。
「ごめんなさい」と相手に言ったときに怒りの顔で見られたら、「まずい」と感じるでしょう。そのことです。
ここで、怒りは常に社会規範違反の強力な社会的シグナルとなるため、国や文化的な違いは認められないのではないかと、思われるかもしれません。
しかし、怒りの表出がそれほど支持されない文化では、怒りは規範違反のシグナルとしてそれほど強力ではない可能性もあります。
調和を目指す日本の場合、怒りはもちろんルールを破ったシグナルにはなりますが、むしろ沈黙(無視)のほうが、より負の感情と連携していることが多いでしょう。欧米の場合は積極的な怒りで相手を責める傾向があるようです。
他者との関係性を
保つための「表情」
日本の社会では、感情は自身のアイデンティティーの表出というよりも、他者との関係性を保つためのツールとして解釈されます。