就活サイトの「ゆる~い現状」
誤解を招きかねない募集情報

 大手就活サイトをそれぞれ見比べたところ、確かにあるサイトの2026年版(26年卒、現在の大学3年生向け)では、いなば食品の募集要項は掲載されていません。一方別のサイトでは、「昨年版の採用情報を紹介」と断り書きがあり、「今年の条件は確約されない」とした上で、その情報を就活の参考にするよう勧める書き方となっています。あれだけの不祥事を起こした企業への対応としては、随分ゆるい印象を受けます。

 ちなみに就活サイトの中には、いなば食品の前年の例として「基本給26万4000円+地域手当4000円+家賃補助6万円(平均)で合計32万8000円」「新卒者以降独身者全員に対し、会社指定の社宅に限り発生家賃の80%を補填(例外あり)」といった内容を紹介しているものもあります。世間のニュースに疎い学生は、いなば食品問題がクローズアップされる以前の情報を信じて、就職活動に入ることも懸念されます。

 今まさに就活真っ只中である2025年卒向けに、いなば食品のセミナー情報やES(エントリーシート)提出の〆切日などを紹介していると思しきサイトもあります。

 こんないい加減な情報の扱い方では、「総合職のはずが内定したら、一般職で給料も低かったと」泣く新卒学生が、またもや出てこないとも限りません。そもそも就活において、企業の採用情報はどのように公示され、確認されているのか。ある就活エージェント会社に聞いてみました。

 まず、新卒就活への支援会社には3種類あることを踏まえておきましょう。いわゆる全国区の有名な就活サイトは、実際は就活広告サイトであり、基本的に企業から資金をもらって、サイトを訪れる学生たちに対してその企業への就活促進活動を行います。

 一方、就活エージェントは、相談に来た学生に本人の希望にマッチする企業を紹介した上で、学生をその企業に入社させた場合にもらう成功報酬が収入源となります。そして公的機関としては、ハローワークだけが新卒採用情報を大学に提供できる仕組みとなっています。

 学生はテレビCMなどで名が売れている企業に殺到する傾向があるため、直接消費者と接触しないBtoBの会社(部品や原料の供給などを主体とする会社)は、応募してくる学生が少なく、地域密着で小回りの利く地方の就活エージェントに学生集めを頼る傾向があります。そうした業者は企業の内情にも一番詳しいと考え、ある就活エージェントの社長に学生募集の仕組みと業界の対応の遅れについて事情を聞いてみました。

 その幹部によると、「企業情報に関しては、就活サイトも地方の就活エージェントも情報取得の方法は変わりません」ということでした。双方とも厚生労働省が作成した「青少年雇用情報シート」に各企業が書き込んだ情報で企業の採用情報を知り、それを基に自社のHPを作ります。