「毎日を気分良く過ごしたい」「他人に振り回されるのをやめたい」「自己肯定感を高めたい」……そんなあなたにおすすめなのが、韓国で10万部を超えるベストセラーとなった『人生は「気分」が10割 最高の一日が一生続く106の習慣』(キム・ダスル著、岡崎暢子訳)だ。韓国で2022年全体1位も記録したという本書には、簡単なことでは揺らがない自分になるための、「気分」のコントロール習慣がまとめられている。「気分」がコントロールできれば人生もコントロールできる──そんなメッセージがこめられた本書のエッセンスをピックアップして紹介する本連載。今回のテーマは、「圧倒的に『仕事ができる人』の考え方」だ。(構成:川代紗生)

人生は「気分」が10割Photo: Adobe Stock

圧倒的に「仕事ができる人」に共通する考え方とは?

 もう何年も前のことだが、職場の先輩で、とんでもなく仕事ができる人がいた。

 いつも飄々としている彼女は、誰よりも業務を抱えていたが、大変そうな顔をすることもいっさいなく、てきぱきと仕事をこなしていた。

 いつもニコニコしていて機嫌がよく、仕事中にもしょっちゅう冗談を言って同僚を笑わせ、職場のムードメーカーだった。

 成果を出すべきときにはきっちり数字を上げ、納得がいかない指示をされたときには、冷静に上司に意見した。

 あれほど「仕事ができる」という言葉が似合う人もいなかった。

 そんな彼女のことを、本書──『人生は「気分」が10割 最高の一日が一生続く106の習慣』のあるページを読んでいたとき、思い出した。

 このエッセイは、韓国で2022年全体1位のベストセラーを記録したそうだ。作家、作詞家、コピーライターとしても活動する著者・キム・ダスル氏による、「毎日」をよりよく変えるための、全部で106のヒントが、まとめられている。

 私の手が止まったのは、79個めの習慣「『人生は結局うまくいく』と、何度も声に出す」という項目だった。

ゆったり、気楽に構えていよう。どう転んだって結局うまくいくから。難しく考えなくていい。最終的にはうまくいくんだから、難しく考えるだけムダ。そもそも成功っていうのは、映画やドラマみたいにたくさんのNGの末にようやくOKが出たワンカットのことだ。(P.212)

 ゆったり、気楽に構える。

 そう、あのずば抜けて仕事ができる先輩も、いつもそうだった。自然体で、気分がいい。成果が出ないからといって機嫌が悪くなり、まわりに気を遣わせる──みたいなことがない。

 だからこそ、人望があり、彼女を慕う人が集まるようになり、チームワークもよくなり、成果を出しやすくなる。そういう好循環が生まれていたのだ。

いつも「焦って失敗する人」に欠けている1つの視点

 とはいえ、誰だって失敗するのは怖い。人に迷惑をかけたくないし、恥をかきたくないという気持ちだって当然ながら、あるだろう。

「優秀な人」というのは、そういう恐怖と、どう戦っているのだろう。

 本書には、こんな言葉があった。

OKシーンと同じで、うまくいっている人も、たくさんのNGと試行錯誤を繰り返した末に成功をつかんだのだ。失敗して、また失敗して、さらにまた失敗して……失敗の繰り返しって、それだけですでに素晴らしい経験だし、それも成功への道のりに過ぎないから。
心が自由を失って複雑に考えすぎた挙句、ビビって道を逸れてしまったら元も子もない。(中略)
緊張がほぐれると心の中に余裕が生まれる。視野が広がってキャッチできることが増える。つまり、もっとポジティブな考え方ができたり、よりよいスタンスでいられるようになるってわけだ。(P.212-P.213)

情緒を安定させるための「魔法の呪文」

 さらに、緊張をほぐすために、ある「口ぐせ」を言うようにするといいそうだ。

声に出して、何度も繰り返したい。
「僕は(私は)、うまくいく。何をやっても成功する人間だ」(P.213)

 ここまで読んだとき、まさに、「仕事がずば抜けてできる先輩」の、楽しそうに仕事をする姿が蘇った。

 彼女にも、ちょっとした口癖があった。それは、「私が大丈夫って言ったら、大丈夫」だ。

 たとえば後輩の誰かが、「うまくいくかどうか不安だ」といったことをぼそりとこぼすと、彼女はいつも、「えー? なんで? あなたなら絶対うまくやれるのに、なんで不安なの?」と、ごく明るく言うのである。

 さらに、「大丈夫大丈夫! 私が大丈夫って言ったら大丈夫だから」と、根拠もなく、でも自信満々に笑っていた。不思議なことに、彼女がそう言うと、本当にその仕事はうまくいくのである。

 今考えると、彼女の心の中にも、多少は不安があったのかもしれないが、彼女はそれを微塵も見せなかった。

 本書にも書かれているように、複雑に考えすぎると、肩に力が入り、余計に失敗しやすくなることを、彼女も身を持って知っていたのかもしれない。

「プライミング効果」という心理学用語もあるように、人間の脳は、直前に受けた刺激に影響され、行動が変わるという。

「思い込みの力が大事」「自分にポジティブな自己暗示をすること」などのライフハックもよく耳にするが、まさに、仕事ができる人たちも、自分なりの呪文で、仕事の邪魔になる余計な不安を吹き飛ばしているのかもしれない。

 本書を読み、私も不安になったときは、「人生は、結局うまくいく」とつぶやいたり、メモ帳に書いたりするようにしようと決めた。

 あなたも、不安な気持ちを心からはたき落とし、「気分」をコントロールする呪文を唱えてみてはどうだろう。

 そうでなくとも、本書には、不安や緊張を落ち着かせ、平常心を取り戻す方法がたくさん書かれている。きっと、人生のよき相棒になってくれるはずだ。