「部下の手柄をかっさらう上司」はなぜ無能なのか→“米国の大富豪”の教えが的確すぎた!写真はイメージです Photo:PIXTA

テレビドラマや漫画などで時折目にする「若手の成果を自分の手柄にする上司」は、実社会にも存在する。そんな上司の下にいる若手たちは落胆し、仕事に対するやりがいを失ってしまうかもしれない。20世紀初頭に大富豪として名を馳せたアンドリュー・カーネギーの生き様から、リーダーとしてあるべき姿を学ぶ。※本稿は、桃野泰徳著『なぜこんな人が上司なのか』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。

若手の努力と成果を
自分の手柄にする上司

「これくらいのこと、当然です。特に難しい仕事でもありません」

 同僚の営業責任者がそういった時、思わず彼の顔を二度見してしまった。大手商社からヘッドハンティングしてきたということで、株主からも期待されている取締役だ。

 その彼に、株主の一人が直近の受注について、「さっそく成果を挙げられてますね、さすがの手腕です」というような社交辞令を言った時の言葉だった。

 しかしその案件は、彼が入社する半年も前から若手が中心になって粘り強く、非常な苦労をして受注に繋げたものだ。彼の貢献はゼロといっていいプロジェクトである。

 なおこの話は、今から20年近く前のことではある。しかし今も変わらず、世の中にはそんな理不尽があふれかえっているのだろう。

「部下の成果を自分の手柄にしてしまう上司」
「このプロジェクトは俺が成功させたと吹聴するリーダー」

 現在進行形で、こういった上司や社長を冷めた目で見ている人は、きっと多いのではないだろうか。そしてこういうリーダーは、例外なく優秀な人ではないというのが、今のところの経験則だ。残念ながらこの時の役員も成果を挙げられず、短い期間で辞任に追い込まれている。

 しかし一体なぜ、こういう発想をする人にはリーダーが務まらないのだろう。感覚的に理解できるのはもちろんだが、なにか必然的な理由があるはずだ。そんなことをずいぶん長いこと考え続けていたが、最近やっと、その共通点と答えらしきものを見つけた気がしている。

周囲への感謝を忘れなかった
鉄鋼王アンドリュー・カーネギー

 話は変わるが、アメリカを代表する著名な大富豪といえば誰を思い浮かべるだろう。令和の時代であれば恐らくイーロン・マスクやビル・ゲイツ、トランプ元大統領あたりだろうか。

 しかし20世紀の初頭まで、全米はもちろん世界一の大富豪と言えば、「鉄鋼王」アンドリュー・カーネギーその人であった。近代化が進む時代にあって、鉄鋼の生産を中心にさまざまな事業に投資・進出して莫大な富を築いた、立志伝中の人である。以下少し、同氏の生涯について触れていきたい。