阪急は高級感vs.京王は日本初、関西と関東の「有料座席指定」何でこんなに違うのか?西武鉄道「S-TRAIN」車両 Photo:PIXTA

西と東で有料座席サービスに違いアリ
「全車指定席」でも「リクライニングなし」なぜ?

 一方で、首都圏の鉄道では関西よりも早く、有料座席サービスに取り組んでいた。1992年に導入された京浜急行「ウィング号」や、2008年に東武東上線で始まった「TJライナー」が先行し、その後は「京王ライナー」(京王線・相模原線)や、「S-TRAIN」(西武・東急など)などが挙げられる。

 しかし現状では、有料座席サービスに対する方向性が、関西と首都圏ではっきりと分かれている。関西がプレミアム感を訴求しているのに対して、首都圏ではほとんどがアテンダントなどのサービスは付かず、リクライニングの搭載もほぼない。シンプルな着席保証にとどまっている。

 実は、首都圏の鉄道各社の座席指定サービスでは、ほとんどがデュアルシート搭載車両を使用している。必要に応じて、ロングシート(座席を壁と平行に配置。中央部が空くため多量輸送に向く)とクロスシート(進行方向に直角に座席を配置。乗客の快適性は上がる)、座席配置を転換できるが、座席をくるっと回す際に隣の席と干渉するため、どうしてもシートの機能を省き、シンプルな仕様にせざるを得ないのだ。

 この方向性の違いは、東西の鉄道事情、客層が異なることが関係している。首都圏は朝晩の移動が東京方面に偏るため、一部ではなく全車両を指定席化して着席の需要に応え、運行を終えた座席指定車両は速やかにロングシート車両に戻す必要がある。一方、関西は京都・大阪・神戸といった大都市では双方向の利用がある。要するに、通勤・通学客だけでなく観光客も多いことから、通常の編成に組み込んで専用車両を構えるような需要があるのだ。

 また、関西では昔から各社のサービス競争が激しく、「料金を取るからには下手なサービスを提供できない」という意識もあるだろう。鉄道に限らず高級感が“お家芸”の阪急にとって、満を持して投入するPRiVACEを、京阪のプレミアム・カー以上の評判にすることは、沽券に関わる至上命令のはずだ。

阪急は高級感vs.京王は日本初、関西と関東の「有料座席指定」何でこんなに違うのか?阪急電鉄「PRiVACE」ロゴ 画像提供:阪急電鉄