首都圏のJR路線では
単価を取れる「有料特急」に誘導か
しかし近年では、そういった事情も変わりつつある。首都圏では22年、京王ライナーがデュアルシート初のリクライニング機能付き座席を導入している。満足できる傾斜でリクライニング可能なこの座席は、鉄道向けシート製造大手のコイト電工が開発した。この技術が各社に波及するかにも注目したい。
他方、首都圏のJR路線では、特急列車への昇格によって、着席サービスを提供していた快速列車の運行終了が相次いでいる。東海道線は「湘南ライナー」が廃止され「特急 湘南」が新設された。同様に、高崎線なら「ホームライナー鴻巣・古河」から「あかぎ」に、中央線・青梅線は「中央ライナー」「青梅ライナー」から「はちおうじ」「おうめ」になった。JRに限らず鉄道会社としては、ある程度の距離があれば、数百円の指定席より単価を取れる有料特急に誘導したい狙いがあるのだろう。
関西に話を戻すと、泉北高速鉄道・南海電鉄が有料特急「泉北ライナー」を投入するなど、各社の着席サービスが出そろってきた。その中で、22年12月から有料列車「らくやんライナー」を断続的に運行していた阪神電鉄の動向に注目したい。らくやんライナーは、200円の整理券を購入すれば確実に座れるよう、1車両の乗車定員を30人程度に設定したもの。いわば、「めっちゃ手足が伸ばせて横に荷物が置けて、らくやん!」といったところだ。本格運行は検討中のようだが、23年1月の運行を最後に登場していない。
コロナ禍で減少した通勤客が完全に戻らない現状では、大幅にディスカウントした通勤定期での多量輸送と並行して、値引きの必要がない座席指定券で利益を稼ぎたいといった鉄道各社の思惑も透けて見える。関西と首都圏で方向性が異なる有料座席サービス、その背景を分かったうえで、乗り比べてみるのも一興だろう。