「ある団体の人、数人と、ある話題について話をしたら数人とも同じ考えを言った、という経験をしたら、その団体の人はみんな、そう考えているのだろうと“思い込む”」……という場合はどうだろう。

 これも、結束したグループをつくっている集団(仮にA集団としよう)のメンバーは、(話題にもよるが)似たような考え(仮にaとしよう)を持っている場合が多く、「A団体の人はみんな、aと考えているのだろう」と考えるのは脳内神経系の省エネにつながる場合が多いだろう。

 どこかで、またA集団の別の人に会ったとき、脳内記憶の「A集団」=「aという考え」という大まかなパターンが意識にのぼるだろう。

 ここで、「細かく比較すると、その際の神経活動のために、かなりなエネルギーが消費され、それを避ける」ことによる脳内神経活動の省エネがなぜそんなに、生存・繁殖に有利なのか、少しだけ触れておこう。

「自然の中での狩猟採集生活」においては、体内に吸収できるエネルギーは、理想の量から比べると不足しがちであったことは容易に想像できる。火を使うことで収穫物の動物や植物からエネルギーを吸収しやすい状態にすることができたと考えられているが、それでも不足は補えなかったという考えが定説である。

約2割のエネルギーを消費する
ホモサピエンスの脳

 いっぽう、狩猟採集ホモサピエンスの脳は、重量では体重全体の約2%にすぎないのだが、他の器官と比べエネルギーの消費量はとても多く、体全体が消費するエネルギーの約20%にも及ぶことが知られている。

 もちろん、それだけのエネルギーを消費したとしても、脳の働きは、ヒトの遺伝子が受け継がれていき、子孫の世代に残って増えていくうえで欠かせないものだったので、進化してきたのだろう。ただし、エネルギーを遺伝子の生き残り、つまり生存・繁殖にはあまり影響がない部分では節約し、その分のエネルギーを、脳の精緻な活動が生存・繁殖に大きく作用する部分に回した方が、トータルとして、遺伝子はより増えやすいだろう。