ちょっと余談になるが、脚で地面をパタパタと踏む、威嚇的な意図行動は、私が研究対象にしてきたシベリアシマリスやニホンモモンガ(いずれも齧歯目リス科)でも見られる。

 彼らは、捕食者であるヘビなどに対し、攻撃されても安全な距離を保ってまとわりつき、ときどき、後ろ脚で地面や木の表面をパタパタと小刻みに踏むのである。われわれは「フットスタンピング」と呼んでいる。

 この行動は、同種に対しても行うことがあり、威嚇のメッセージとして使われるのではないかと考えている。

 彼らのフットスタンピングは、ヒトの地団駄と違い(踏みつけるのではなく)、前にとびかかる行動の意図行動として進化してきた動作だと推察される。

 この話(これから書く話)、書こうかどうか迷ったのだが、シベリアシマリスやニホンモモンガのことも書いたんだから、まー、私のことも書かないとフェアーじゃない、ような気がして(?)、書くことにする。

思わず地団駄を踏んだ
幼い頃の記憶

 実は、私も、子どもの頃(小学生の低学年か中学年の頃だったと思う)、地団駄をしたのだ。はっきり覚えている。

 確か、保護者に向けた発表会で劇をすることになり、その練習を学校でやっていたのだが、「劇で使うから、みんな家から○○(それが何だったか覚えてない)をもってきてね」と先生に言われた○○を母が忘れていたのだ(小林少年がはっきりと伝えてなかったのかもしれない)。

 ○○をもっていかなければならない日の朝、とにかく、母がそれを用意していなくて、小林少年は、母に怒ったのだ。みんなもってくるのに僕だけもってない。そんなことをとても気にする少年だったのだ。

 そして、自分でもなんだかわからないけど、地団駄をやってしまったのだ。きっと、地団駄を発現させる神経配線プログラムが脳内に存在するのだと思う。

 それからしばらくして、恒例の家庭訪問があった。担任の先生が、児童一人ずつ、家を訪問し、保護者(大抵は母親)と話をするのだ。

 子どもたちは、家庭訪問の日は、みんな、家のどこかに隠れて、先生と親がどんな話をするか聞き耳を立てていたものだ。

 話が劇のことになったとき、母親が「○○を僕だけもっていけない、と言って地団駄を踏んで怒ったんですよ」と言ったのだ。小林少年は、顔から火が出るほど恥ずかしかったのだ。そういうこともあってのことか、私は地団駄のことをよく覚えている。地団駄を踏んでいるときの感触も蘇るような気さえする。