藤田 今年2月で前年同月比0.9%下落のコアインフレ率が仮に2年強で2%に達するとすれば、3ポイント近く上昇ということで、かなり急ピッチです。しかも、景気に対してマイナスである消費税の増税も控えていますし……。
ただ、リフレ政策自体は、過大評価される傾向はありますが、景気浮揚効果や株高、円安の効果があることは事実です。「リフレによって、ハイパーインフレになる」、「バブルになる」といった批判がありますが、私はそれらの可能性は低いと思います。それに対してデメリットは限定的なので、徹底したリフレ政策を実行することには賛成です。ただし、おっしゃるとおり、出口戦略については、今から準備することが望ましいと思います。
翁 現段階で黒田総裁たちは「2年間での目標達成をめざし、目標達成するまでアクセルを踏み続ける」と表明しているので、少なくともそれで残存期間の長い国債までどんどん買うのは危険だ、と僕は訴えたいわけです。アクセルを踏み続けているうちに、気がつけば日銀が保有する国債の平均残存期間が非常に長くなっていて、日銀のバランスシートを壊さないためには金利は非常に長い間あまり上げられない、という状況が作り出されるのが恐ろしいですね。そういった状態で、インフレが何らかのショックで顕在化し加速していったとき、対処できるのでしょうか。
藤田 なるほど。リフレ政策のリスクをうまく整理して頂けたと思います。期限を区切って徹底したリフレ政策を実行することを主張する私にとっても、考えさせられることが多い内容でした。本日はお忙しい中、本当にありがとうございました。
※編集部注:対談日は、日銀が「量的・質的金融緩和の導入」を決定・表明した4月3−4日の金融政策決定会合前の3月27日でした。
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