2013年末には日銀当座預金残高が85兆円まで達する見通しですが、新執行部の方針だと、さらにどんどん積み上がりますね。

 ただ、リフレ政策をとことん実践すべき、というご意見に対する僕の考えは留保したいところです。確かに「デフレから脱却する」というコミットメントで新執行部が発足しているので、その旗印には問題がないと思いますが、黒田総裁が「質も量も緩和する」とおっしゃっている中味が気になる。長期国債をどんどん買っていくという意味合いだとすると、デフレから脱却した後はどうやってゼロ金利から抜け出すつもりなのか?と思うわけです。

藤田 その点については、特に明確には触れていませんね。

 通常なら、金融政策のスタンスをニュートラルに戻したうえでゼロ金利を脱却していくわけですが、今回はその過程で非常に大きな財政的コストが発生します。長期国債を買って異常に膨張したバランスシートを収縮させるためには買った長期国債を売らなければならないが、それはあまり現実的でない。それができるなら、そもそも「銀行券ルール」など要りません。

 そうなると日銀当座預金に金利をつけて金利を底上げするしか術はないのですが、そうすると日銀から金融機関への膨大な利払いが発生してしまいます。トコトンやる!といっても、そういった納税者へのコストはきちんと考えないといけない筈ですが、どうやって物価安定のための金利政策と財政コストの抑制を両立させるのかについて明示していません。

藤田 確かに、おっしゃるとおりで具体性が乏しいですね。

 大胆な金融緩和をすると財政規律喪失懸念で長期金利が上昇するという意見をよく耳にしますが、この点については、僕は、とりあえず懐疑的です。日銀が大胆な緩和を推し進め長期国債を大量に買う姿勢にある中で、長期金利が急騰するとは考えにくい。それよりも、いつかデフレ脱却がみえてきて日銀が長期国債を買う必要がなくなり、むしろバランスシートの収縮が必要になってきた時点で、長期金利がどのような反応を示すのかが気掛かりです。思い切ったリフレ策を打ちバランスシートを膨張させればさせるほど、デフレ脱却に成功した際の反動も大きくなります。トコトンやるつもりなら、かなり長い時間軸で戦略を練っておかないと危ういと思いますね。