『セクシー田中さん』報告書に見る他人事ではない仕事のすれ違い、「クッション言葉」「人づてダメ出し」が危険すぎる理由『セクシー田中さん』問題、小学館と日本テレビが出した調査報告書から見えることは Photo:PIXTA

日本テレビ系のドラマ『セクシー田中さん』をめぐり今年1月に起きた騒動について、日本テレビと原作漫画の版元である小学館がそれぞれ調査報告書を発表した。中身は詳細で、厚みのある分量の報告書になっている。ここから我々が読み取るべきこととは何か。(フリーライター 鎌田和歌)

『セクシー田中さん』が再び炎上
他人事ではない現場の亀裂

 日本テレビは5月31日に、小学館は6月3日に、『セクシー田中さん』についてのそれぞれ調査報告書を発表した。

 しかし、これをきっかけとしてSNS上では再度、両社(特に日本テレビ)への批判が噴出している状況である。原作者が亡くなってしまった痛ましさを思えば、原作のファンは怒りの持って行き場がないところであろうし、なおかつネット上にはテレビ局やマスメディアに象徴されるような権威への不信感も強い。

 ただ、今現在テレビ番組の制作現場にいたり、そうでなくても何かの仲介をしながら仕事を進めたりした経験のある人にとっては、このようなプロジェクト過程での認識の齟齬や修復しがたい亀裂を、他人事だと思えない人も多いのではないだろうか。

 報告書からは、原作者からの意向が脚本家に伝えられるまでに、それぞれ小学館の担当者と日テレのプロデューサーが間に入っていたことがわかる。

 小学館担当者と日テレのプロデューサーは、それぞれ原作者と脚本家がお互いを悪く思わないように、伝える内容のカドを取るなど配慮したようだが、結果的にはこれが完全に裏目に出てしまい、原作者と脚本家は一度も会うことのないまま、お互いに強い不信感を抱く結果になってしまっている。

 漫画をドラマ化する現場は特殊な世界だが、異なる業種や職種の人を仲介する際の難しさは、多くの仕事で共通するところだ。また、人間関係の中で「人の仲介(伝言ゲーム)が入ったことで、問題が余計にややこしくなった」といった経験をしたことのある人もいるだろう。