仲介者による
「ダメ出し」は、対面よりツラい

 以前寄稿した、『「こんな悪口を言われていたよ」と伝えてくる人とは、一刻も早く縁を切るべき合理的理由』(https://diamond.jp/articles/-/333365)という記事の中で、「人から伝えられる悪口は直接言われるよりも2倍つらく感じる」と書いたが、仕事上のダメ出しもこれと似たところがある。

 今回のケースでは、仲介者たちがそれぞれ配慮してまるめた形で原作者の意向(脚本への批判的な指摘)を脚本家(と制作チーム)に伝えており、途中から脚本家が、原作者の言葉が厳しいので、そのまま伝えないでほしいという要望も出したようだ。

 しかし、「そのまま伝えないでほしい」と言った後でも、脚本家からすれば「本当はもっと厳しい内容を言われているはずだ」と考えずにはいられなかったはずだし、むしろ実際の言葉よりも怖いものを頭の中で思い描くようになったかもしれない。

 ここからわかるのは、どのように配慮をしたとしても、伝えられる内容が受け手にとって厳しいものであればあるほど、仲介者を通じてのやりとりは危険であり、受け手のストレスは容易に軽減されないということだ。

 この点は報告書でも検討されており、原作者と脚本家が面談しておくべきだったのかどうかについて、複数の有識者(漫画家・脚本家・プロデューサー)からの意見が紹介されている。 

 意見は様々で、「会ったからといって円滑にことが進むかといえばそうではない」という意見もあり、それはそうだろうと思われる。

 ただ、早い段階で、脚本家を含むドラマ制作側が原作者へのリスペクトの気持ちを何らかの形で示すことができていれば、もう少し事情は違ったのではないかと思う部分もある。原作者の不信感の理由の一つは、原作が侮られているのではないかというものであったと推測する。