この点で、日テレ報告書をそのまま読むのであれば、ドラマ制作チームには原作者の意図を汲む用意はあったのであるから(そうでないなら、プロットや脚本化にあたって何度もラリーを重ねること自体しないだろう)、この点で誤解があったなら非常に残念なことだ。
記憶に残らない「なあなあ」現場
どんな業界でも起こり得る事態
また、報告書からはある人が伝えたと思っていたことが、伝えられた側の記憶には残っていなかった、というケースが多々あるように見受けられる。この点はおそらく、多くのビジネスパーソンが「なぜメールなどの書面に残しておかなかったのだろう」と疑問に思う部分だが、せわしない制作過程の中で、なあなあになってしまったのかもしれない。
日テレ報告書の中の有識者へのヒアリングで、漫画家の東村アキコ氏が、やり取りの履歴が残り自分のタイミングで確認できるLINEグループでコミュニケーションを取ることを提案しているが、「言った、言わない」を防ぎ、どの点が制作過程で重視されるポイントなのかについて認識を擦り合わせていくためには、このような手段も有効だろう。
もちろんLINEのやり取りをストレスに感じる人もいるであろうから、やり方は人に合わせて変えていく必要があるが、全体の方向性や、原作者の譲れない意向については、LINEグループのアナウンス機能を使うぐらいには、周知徹底されて良いはずだ。
以上、まとめてみたが、これらはもちろん結果から考えられる問題点であり、慌ただしい制作過程の中でこういったコミュニケーションの齟齬を修正していくのは難しかったのだろう。根本的には、報告書でも指摘されている通り、制作期間が短かった点に問題がある。
いずれにしても、今後このような事態はどのような業界でも起こってほしくない。関わる全ての人が、安心に仕事をすることができる環境が整うことを祈るばかりである。