もちろん、今回の件に関する問題点はそれだけではなく、ドラマ制作現場の時間の足りなさや、そもそものテレビ局の、他メディアに対するリスペクトに欠ける体質といったものも考えられるであろうが、本稿ではこの調査報告書から、複数の人にコンセンサスをとりながらプロジェクトを進める際に起こりがちなトラブルと、その対応策を読み解きたい。

 「自分とは関係のない人々が起こしたやらかし」ではなく、「これは他人事ではない」と受け止める人が多い方が、悲劇の再発防止につながると思うからである。

「できれば」「マストではないので」
「クッション言葉」の弊害

 報告書を読むと、原作者の要望を伝える際に仲介者が「なるべく」「できれば」「マストではないので」といった言葉を選んでいる様子がうかがえる。

「意向や指示の文面が強くなりすぎないように」という配慮だったのではないかと思われるが、結果的にこういった「配慮」の積み重ねが、齟齬を招いたのではないのか。

「恐れ入りますが」「差し支えなければ」「ご迷惑でなければ」といったクッション言葉はビジネスマナーの一つであり、コミュニケーションを円滑にするために役に立つと言われる。

 確かにクッション言葉は便利な側面もあるが、日本語を使う者同士の場合、こういったコミュニケーションが当たり前になりすぎていて、真意がつかみづらい場合もある。

 さらに言えば、「なるべく」や「できれば」といった言葉は、言っている側は「なるべくなら通したい」と思っているが、言われた側は「必ずしもそうでなくてもいい」と、自分にとって都合よく解釈しがちな言葉である。

 最近であまり使われなくなったが、「ナルハヤ(なるべく早くお願いしたい)」や「ASAP(as soon as possible)」よりも、明確に期限を指示した方が発注側のストレスが減るという事象とも似ている。