近年、日本には不動産バブルが到来し、住宅購入は大きな注目を集めている。しかし、そんな最中マイナス金利の解除が決定し、そろそろ家を買おうかと考えていたものの、不安を感じる人も多いのではないだろうか。そんな住宅購入を不安に感じる人の悩みを解決するために住宅購入の思考法』が発刊された。本記事では発刊を記念して、本文の一部を抜粋、再編集してお届けする。

住宅とお金の関係性Photo: Adobe Stock

固定金利と変動金利はそもそも成り立ちが違う

 固定金利にするか変動金利にするかは誰もが悩むと思います。最近では、ローンを組む方の約7割が変動金利を選択していると言われているほど、今の変動金利の金利の低さは魅力的です。

 一方で、アメリカでは約9割が固定金利を選択しているとも言われます。なぜここまでの違いが出るのでしょうか。

 まず、変動金利と固定金利は金利の成り立ちが異なります。変動金利は短期プライムレートに基づき決まり、さらに短期プライムレートは政策金利の影響を受けながら決まります。

 政策金利は2024年3月にマイナスから0~0.1%への引き上げが決定したばかりですが、まだまだ低い基準で推移しています。プライムレートだ政策金利だと難しそうな用語ですが、大事なポイントは変動金利は政策によって決まる部分が大きいという点です。

 日本はこれまで景気を刺激するために政策金利を下げ、法人・個人がお金を借りて投資・消費をしやすくするように促してきました。

 一方で固定金利は10年物国債利回りと連動します。「国債と言われても」という人も多いと思いますが、こちらのポイントは国債は取引市場で取引されるため、グローバル市況の影響も大きく受けるものという点です。

 ただし、政策金利同様に経済の刺激のために長期金利の基準となる10年物国債の金利を抑えたいと考える政府・日銀は、国債を買い支えることで金利抑制を行うYCC(イールドカーブコントロール)を行ってきました。

 2016年には金利0%程度を目標に運用されていましたが、2024年の3月にはマイナス金利の解除とともにYCCの撤廃を発表しました。これにより、固定金利の上昇は続くと考えられています。

 少し難しい話が続いてしまいましたが、押さえてほしい点は次の2点です。

ポイント1:固定金利と変動金利は金利の決まり方が異なるため、固定金利が上がっているからといって変動金利も上がるというわけではない

ポイント2:景気を刺激するために低金利政策を実施してきたことから、金利が上がるときは景気がいい=給与や物価が上がるときである

 なお、私は固定か変動かと聞かれたら、変動金利一択です。

 今後上昇のリスクももちろんありますが、そのときは給与が上がる可能性も高いという点(もちろん全国民が一律に上がるとはいきませんので、仕事に励み続けることは必要です)、固定金利の負担を上回るほどの金利上昇は日本の人口・経済成長上考えにくい点がまずは挙げられます。

 そして、なにより住宅ローンの仕組み上、最初の10年で多くの金利を払うため、将来上がる可能性よりも今現在の金利のほうが重要だからです(元利均等返済の場合)。

 そういった視点から、変動金利をおすすめしています。ただし、それでも不安がある場合には、たとえば半分を固定金利にしてリスクヘッジを行い、半分を変動金利にするのも一案です。

 もし変動金利が固定金利を上回った場合は変動金利のほうから繰り上げ返済していくことでリスクをコントロールすることもできます。このあたりは正解がなく、個人のリスク許容度によりますので、パートナーや営業担当とよく話してみるといいでしょう。