探索の力を高めることは、データ活用の基点にもなりえます。

 材料(データ)の前提条件やそれを取り巻く環境を背景に、常によりよい方法はないかと探索しなければ、データサイエンティストは適切な分析も判断も考察もできません。

 ビッグデータという流行り言葉にまどわされず、まずは身近にある小さな関心事を掘り起こし、インプットすることから始めましょう。

業務時間内のフリータイム
グーグルの20%ルールとは?

 私(山本)がかつて勤めていたグーグルには、「20%ルール」という独自の文化が存在しました。これは、1日の業務時間のうち20%の時間を、仕事に関係なく自分の好きなことに自由に使ってよいという文化です。

 つまり、1日の勤務時間が8時間であれば、90分は自由なプロジェクトにあててOKということです。実際には、8時間以上、100%以上の時間は仕事をやりきった上で、さらに20%をやるということから、「120%ルール」とも呼ばれます。読書やスキルアップ、自主的なプロジェクトの立ち上げや参加などがあります。

 この20%ルールこそが、同社のイノベーション創出を後押しした一因であると言われています。

 見方を変えれば、この20%ルールの本質は、組織による個々の社員への「探索の促進」です。

 既存の業務以外に目を向ける時間をつくるということは、新しい情報をインプットすることによって自らのうちに新たな視点を獲得し、視野を広げることと同じです。それが巡り巡って組織の生産性向上やイノベーション創出にもつながっていきます。

“わかったふり”が
すべてを台無しにする

 外国語の勉強やプログラミング講座に通うなど、新しいジャンルのインプットを始めると、誰しも必ずどこかで「わからないの壁」にぶつかります。データサイエンスであれば、情報科学の基礎がある人を除いてほとんどの人がそうでしょう。

 最近になって必要性が強調されている「リスキリング」も未知の学びに挑戦する意味合いのほうが実は強いです。「学び直し」と聞くと既存の学びを再度深めるような印象を受けますが、10年前の大学の最先端知識と言われていたことでさえ、新しい知識で更新されているからです。