事実誤認だらけで
支離滅裂な答申

 さて、自家用自動車活用事業、4月の導入からまだ3カ月も経過していない。つまり、制度を動かしてどのような問題や弊害が生じているのか、今後生じうるのかについて、利用の実態を踏まえて把握したり、分析したりできるような状況には至っていないということである。

 ところが、答申には、いわゆるライドシェアに関する部分についてのみ、異例にも、3ページにわたる「タクシー事業者以外の者によるライドシェアに係る法制度に関する規制改革推進会議意見」が答申本文とは別に、答申中に掲載され、それに続いて「意見別紙」として、「デジタル技術を徹底的に活用した真のライドシェア事業を実現する法律制度等について(骨格案)」まで掲載されている。

 その中身はといえば、まず「意見」の前提として、地域で「『移動の自由』が失われ、地域が崩壊していくことへの危機感がある」とし、その原因は少子高齢化によりバスや鉄道が減便したり、廃止になったりしたことや、コロナ禍を契機にタクシードライバーが減少したことを挙げている。

 そして、「今後、人口減少が進めば状況の悪化は必至であり、局所的、局時的に多少の回復をする地域があっても、全地域で『昔に戻る』ことは、他の産業と同様に、あり得ない。国として、現実を直視して、一刻も早く、地域崩壊の危機を回避するための、あらゆる解消策を実施して移動困難の危機を回避する今後の長計を検討する必要がある」とする。

 こうして自家用自動車活用事業が始まったこと自体は評価しつつも、先にも解説した同事業が「限定的」であることを批判した上で、結論として、「タクシー事業者以外の者が行うライドシェア事業を位置づける新たな法制度について、次期通常国会の法案提出を視野に、年末に向けて、法案化作業を直ちに開始すべきである」としている。

 要するにとにかくライドシェア新法を制定して、一刻も早く制限のないライドシェアを導入せよ、秋の臨時国会だと間に合わないかしれないが、遅くとも来年の通常国会には関連法案を提出して成立させ、間髪入れずに施行せよ、と言いたいようだ。なお、このような形式になったのは、答申の本体となる部分に「○年度中に検討」といった形で盛り込むことができなかったということだろう。

 さて、なんと支離滅裂な内容だろうか。この内容が事実誤認だらけであることは、規制改革推進会議事務局の役人も重々承知しているだろう。作成・取りまとめをさせられた事務局の役人たちが本当に気の毒である。