「インフラドリンク」というコンセプトで
自社製品も製造

 主力事業のもう一方の柱である自社製品開発事業。こちらは、楽天年間ランキングの「水・ソフトドリンクジャンル賞」では2021から2023年にかけて3年連続1位を獲得する、勢いのある事業だ。

 実績の裏側には、「脱付加価値戦略」という、OEM事業で培ったノウハウが生かされた戦略がある。

「『脱付加価値戦略』とは、商品に付加価値をつけることにこだわらないという考え方です。当社の扱っている飲料は、水、お茶、炭酸水に限定しています。これらの品種や味も、あえて『付加価値』をつけていません。基本的にベーシックなものであり、生活になくてはならないものであるという意味で、われわれは『インフラドリンク』と呼んでいます。高品質で、なおかつお求めやすい価格帯で提供していくということを当社のミッションのひとつとして掲げています」(人財本部長・浅井氏)

 脱付加価値戦略はただ単に「付加価値をつけない」だけではなく、本質的な価値の提供へと注力することだという。

「『脱付加価値戦略』は、付加価値にこだわらずに飲料の本質的な価値は何なのかということを突き詰めた戦略なんです。飲料の本質的な価値というのは、喉を潤すということにあるとわれわれは考えています。しかし『脱付加価値』だからといって、付加価値を全くつけないということではないんです。付加価値にあえてこだわる、あるいはこだわりすぎるのではなくて、本質的な価値の提供へと注力する。そういう戦略だと考えています」

 自社ブランド商品は、ECサイトでのまとめ買い、自宅を基点とした消費を想定している。このような付加価値にとらわれない、「脱付加価値戦略」で、主力商品のひとつ「ZAO SODA」(炭酸飲料)は2020年に販売開始。低価格・まとめ買いの需要から、多くのユーザの支持を受けて、楽天年間ランキング「水・ソフトドリンクジャンル賞」でも2021年から3年連続1位を獲得した。

「あえて付加価値をつけてません」売上高300億円の飲料メーカーが打ち出す“斬新すぎる戦略”2023年も総合1位獲得(楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー) 左から執行役員SCM本部長 橋本知久、人財本部長 浅井祥平、執行役員経営管理本部長 清水大輔 

 ZAO SODAがこのような実績を残した背景として、発売当初2020年に流行した新型コロナウイルスの「コロナ禍」の影響もあったという。

「ZAO SODAが伸びた背景に、コロナ禍の影響が大きくありました。買い物でも外出機会を減らそうとする動きからECの利用に繋がったのだと思います。」(前出・橋本氏)

 今では人々に『インフラドリンク』として購入される、ライフドリンク カンパニーの商品だが、コロナ禍が緩和された今、今後どのように利用されていくのだろうか。

「飲料はまとめ買いすると、かなりの重量になります。スーパー等でまとめて買って持ち帰りするというのはなかなか大変ですよね。自宅まで届けてくれるサービスが基本であるECサイトとわれわれの販売スタイルとは非常に相性がいい。当社に限らず、ECサイトの市場自体はコロナ禍を経て生活に定着したと思われますので、これからも需要は伸びていくと想定しています」

 さらには、昨今、一般家庭や各自治体での防災意識の高まりにより、普段の食品を多めに買い置きし、 消費した分を買い足すことで、 常に一定量の食品が家庭で備蓄されている状態を保つ「ローリングストック」という購買行動が普及していることが、ZAO SODAのようなまとめ買い需要を後押ししていると橋本氏は指摘する。

「ライフドリンク」という
新しい価値提供

「大手飲料メーカーさんの高付加価値戦略に象徴されるような、お客様ご自身の好みに合わせた、嗜好性の高さに応える商品展開とは逆張りの『インフラドリンク』の提供という戦略を当社はとっていますが、生活に欠かせない商品提供ということが今後も当社の使命と考え、社名にもある『ライフドリンク』という価値提供に、今後も傾注していきたいと思っています」(経営管理本部長・清水大輔氏)

 多様な価値観と嗜好性に対応していこうとする飲料メーカー各社の戦略が主流のなかで、LDCは「脱付加価値戦略」という独自のスタンスにこだわりつづけている。その独自の“個性”が、多様性あふれる商品群のなかで着実な実績を刻んでいるのである。

【訂正】記事の初出時より以下の通り訂正します。
15段落目、25段落目:人材 → 人財
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