何気ない会話で「仕事できるな」と思ったことはないでしょうか。
2023年と2024年上半期のベストセラーランキングビジネス書部門で1位(日販/トーハン調べ)になり「反省しっぱなしだったけど、最後は感動して涙でた」などと話題沸騰中の『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者である安達氏は、コンサルタントのとして、さまざまな企業の採用面接に携わってきました。そんな安達氏はとある面接で、「お好み焼きの話」で「この人、仕事できるな」と思った経験があるのだそう。本記事は、地頭がよくて仕事のできる人だけが知っている言語化のコツについて解説する。(構成/淡路勇介)

頭のいい人が話す前に考えていることPhoto: Adobe Stock

お好み焼きの話で「地頭良くて、仕事できる」と思った話

 中途採用の面接官をしていたときのこと、ある採用候補者の履歴書に

趣味:お好み焼きを美味しく焼くこと

 と書かれていました。
 面接で何気なくこの趣味について尋ねると、その候補者は

お好み焼きは、蒸し料理なんですよ

 と答えました。お好み焼きは名前の通り、焼くものだと思っていたので、私は気になって、「どういうことですか?」と質問しました。するとその候補者はこう話したのです。

 僕は、大阪人なので、実家のお好み焼きの作り方があるんです。そしておそらく私を含め、大阪人のほとんどがこう思っていると思います。“自分の家のお好み焼きが一番美味しい”と。ですが、ある日、ふと「おたふくソース」のHPに載っていたお好み焼きのレシピを見てみたんです。そしたら、レシピの途中に「蓋をして4分蒸す」と書いてあったんです。今まで、焼くだけで蒸してはいませんでした。実際やってみると、材料が同じなのにふわふわで美味しいんです。みなさんも、お好み焼きを蒸し料理だと思って作ってみてください。

 私はこの発言に知性を感じました。「この人、地頭良くて、仕事できるな」と。
 そして、この発言だけが理由ではないものの、他の面接官からも“彼は思考力のある人”と認識され、採用に至りました。
 私が彼に知性を感じたのは、

・「家でのお好み焼きの焼き方が美味しい」という思い込みに意識的になり、自分とは違う意見を調べることができる(「客観視」できる)

・お好み焼きを“焼き料理ではなく蒸し料理だ”と再定義し、インパクトを残した(「言語化」できる)

 この2点です。
 とくに、2つ目の言語化力は、地頭が良くて、仕事ができる人に必ず備わっている能力と言えるでしょう。

 実際、面接のあとも、私は妙に“お好み焼きは蒸し料理です”という発言が頭に残り、家で家族に披露したところ、妻からも子どもたちからも絶賛されました。
 彼の、“お好み焼きは焼き料理ではない、蒸し料理だ。”というアウトプットが私の心を動かしたのです。

 実は、彼のこの発言には、言語化力を高める思考フレームが隠れています。